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プライバシー保護の為か口元から上の部分は画面からカットされてはいるものの、恐らく被害者達と同年代くらいの二人組の男が、インタビューに答えている。
「でもさぁ、あいつらなら…うん。…こんな言い方しちゃ悪いけど、仕方ないって言うか。評判良くないし」
「俺らは実際被害に遭ってないけど、夜中のバイク騒音でしょ。それだけならまだ可愛いもんだけど、脅されて金盗られた人も居るし、女の子に乱暴して無理矢理襲ったりしてたらしいし、中には恨んでる人もいたんじゃないかな」
二人組の男の話が終わり、今度は年の頃は中年と思しき女が、甲高く独特な口調で答え始めた。
「犯人、まだ判ってないんでしょ?その前にも、あの神社の敷地内にある木で首吊って自殺した女の子が居たわよねぇ…。怖いわぁ」
それだけ喋った後、女は玄関の扉をピシャリと閉めた。
連日放送される連続殺人事件のインパクトが強いせいか、昨年の八月、熊戸神社の敷地内にある楠木にロープを掛け、首を吊って自殺した女子高生が居た。
部活動が終わると真っ直ぐ家に帰って来る真面目な女の子だったらしく、遅くなる時は必ず電話を掛けて来る子が、その日は夜中になっても連絡が無かったと云う。
心配した両親が相談の上捜索願いを出していたのだが、結局は翌日の朝方、帰らぬ人の姿となり発見された。
あの子は、本当に自殺だったのだろうか?と、亜津の脳裏に疑問が過った。
珈琲の香ばしい匂いを嗅ぎ、一口啜る。
画面はまた、現場の武光リポーターへと戻された。
「先日殺害された多部さんは、左鎖骨下部分に蝶のタトゥーをした不良グループ・『アルストロメリア』の一員と見られ、以前にこちらの神社で遺体として発見された小野豪城(オノ ゴウキ)さん・伊波万里(イナミ マリ)さんの事もあり、警察は同グループを狙った連続殺人事件として捜索を進めています」
画面に被害者達の顔写真が映し出される。
夢の中では血だらけで見にくい部分もあったが、どの被害者も亜津の夢の中に出て来た人物と同じ。
あの、気味が悪い女に乱雑に引き摺られていた者達だ。
しかし、只一人、写真が載っていない者が居る。
「又、犯行が真夜中だった為か目撃者もなく、未だ犯人の目星すら付いていないのが現状です。現場からは以上です」
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