闇の中での絶望

第1章

平日の真っ昼間地下鉄に乗っている乗客は僅かだった。

電車が地下５００メートルの、国内で一番深い所に造られた駅に到着した時、凄まじい揺れが電車と電車に乗っている乗客を襲う。

駅から伸びる２本のトンネルと地上に向かう通路は土砂で埋まり、電車の乗員乗客と駅員、それに駅で電車をまっていた少数の人達が、構内に閉じ込められた。

地震発生から４週間後。

地下５００メートルの駅を塞ぐ土砂の１部が取り除かれ、救助隊員が真っ暗な駅の構内に呼びかける。

「誰かいますかーー！」

地震発生から４週間も経過しており、閉じ込められた人達の安否は絶望的。

救助隊員が呼びかけてから数分後、真っ暗な駅の奥から数人の人が駆け出してきて救助隊員達に襲いかかる。

それは、真っ暗な闇の中に閉じ込められ、待てども待てども救助隊が現れず、空腹と絶望から狂い、食料を求めて互いに殺し合い、文字通り弱肉強食の世界で生き残った狂人達だった。