1人が本棚に入れています
本棚に追加
第2章 麻布十番駅
「今、地下鉄に乗ってるんだから電話しないでよ」
老婆がケータイに向かってがなっている。
うちの母親に顔がどことなく似ている。
「へぇ?で、電話?ずいぶん小さいよね?」
ナツミはショルダーホンを肩から下げていた。
「バカにされるからやめてくれ」
しかし、誰もナツミを見て笑う者はいなかった。
僕もナツミも存在していないんだ。
シルバーシートでアイメイクをしているコギャルあたりがキックでもしてきそうだけど?
え!?コギャル!?古くない?彼女も幽霊なのかな?
「イマドキ、ボディコンかよ?」
コギャルが話しかけてきた。
「ヤッパ、幽霊だったか?」
「兄ちゃんもかよ?彼氏がイロイロとヒドイ奴でね?やっと赤ちゃんが授かったのに」
「それ以上は聞かないよ、悪かったな?」
「イヤ、友達探してたんだ」
「姉ちゃん名前は?」
「シホだよ」
「そっか、僕はカズマだ」
「109なくなったんだね?」
「そうみたいだね?爆撃でもあったのかな?」
よくアソコで遊んだよな?久々に行ってみたら黒焦げになっていた。しかも、109だけだ。
「スコーピオンの仕業かな?」
ナツミが言った。
スコーピオンは元々は派遣会社だったが、クーデターを起こした。
「まっ、何でもいいや…………ユキヤが死んだんだから」
ユキヤってのはシホのダンナだった男だ。
天罰が下ったってわけだ。
隣の車両に移ると窓の外をイカが泳いでいた。
数年前に発生した大震災によって麻布十番海岸が出来た。そう、このメトロは海底を進むことが出来るのだ!
僕level2、ナツミlevel3、シホlevel2
中吊り広告でショコタンが笑ってる。
DCブランドを着たゾンビが襲いかかってきた!
「あの頃は楽しかったなぁ?毎晩豪遊だったぜ?グヘヘヘヘ…………」
僕はメリケンサックを繰り出した!
ボカッ!DCゾンビは死んだ!
《サバイバルナイフ》を手に入れた!
「ウマイもんばっか喰ってるから動きが鈍いのね?」と、シホが言った。
ナツミのショルダーホンがルルル♪と鳴った。
「モシモシ?あっ、タカさん?ヘッ?」
ナツミが固まっている。
「どうかしたのか?」
「ゾンビになりたくなけりゃ《勾玉》を探せ、だって」
最初のコメントを投稿しよう!