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「やっほー、幽霊だよ」
いきなり目の前に幽霊と名乗る少女が現れたのは僕が中学生の頃である。
「なんで来たかって?それは寂しそーにしているぼっちの君のた・め!この素晴らしく可愛い私が来てくれるなんて君は恵まれてるね」
勝手にやって来て、勝手に僕の心に傷を付け、アイドル並みの笑顔を振りまく少女はその後しばらく僕に付き纏っていたが……
「ねえ、今私の事考えてたでしょ。まさか、あんな事やこんな事?やっだー涼介君ったらハレンチ!」
「違います。せめて僕の心のなかだけでも貴女を亡き者にしようとしてたんです」
「あら、私はもう死んでるので亡き者でーす。もう、こういうところ涼介君抜けてるよね」
そう、高校生になった今でも少女はいるのだ。
あいつは本当に幽霊で僕以外には見えない。実は現れた直後それに気付かなかった時期があり、普通に返事をしていたら周りからは大きな独り言をする奴、つまり変人に思われた。お陰でぼっちが深刻化したのだった。
そんな中学校生活が嫌で、高校はできる限り同じ学校の人が居ない所を選んだ。あいつにも返事は口頭でしないよう心がけているので、変人と思われる事なく、友人もできた。まあ元からぼっち気質だったので数は多くないが。それでも楽しい高校生活を送れている。
今もその友人たちとバンドの練習をしている。
「ねえ、凛ちゃんを好きなんでしょ」
「は?」
思わず練習していたベースを落としてしまった。
因みに凛ちゃんとはバンドのキーボードを担当してもらっている子で、実際少し気になってはいる。
「おい、大丈夫か?いきなり奇声発したと思ったら楽器落としやがって。顔も赤いし」
「ごめん、全然大丈夫だから」
幽霊の所為でギターの奴に心配されてしまった。でも心配されてるってなんかいいな。昔からもうちょい友達作ろうとするんだったな。
「じゃあ合わせまーす。1.2.3」
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