幽霊

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「それでさ、好きなんでしょ」 「まだ言ってんのかよ。まあ図星なんだけどさ」 あの後は何も言われなかったけど、僕の部屋に戻るなりすぐこれだ。本当に昔から僕の悩みを突いてくる。 「ねえ、いつ告白するの?」 「まだ決めてない」 と言うより振られたら後が怖いから告白しないつもりだった。 「あ、振られるのが怖いんだ。ヘタレだなー涼介君は。大丈夫。成功するよ。この天才の私が言うのだから安心しなさい」 「貴女に太鼓判を押されるほど怖いものはないよ」 「酷いなー。まあ一回騙されたと思って告白しちゃいな!確か来週ライブでしょ。その後にでもやりなよ」 「嫌だよ。もしも失敗して僕たちの関係が崩れたら嫌じゃないか」 そう断り続けたが幽霊は毎日僕に告白しろと言ってきた。半ば洗脳のように言われ続けた僕はもうなるようになれと告白することにした。決行はライブの日。こうなったら成功させてやる。 「凛、ちょっといいか」 ライブも無事成功し、今は帰路についている。幸いなことに帰りの方向が被る人は殆ど居なくて2人きりになれている。 「お!とうとうやるのね。頑張れヘタレ」 「うるさいな。ちゃんとやるよ」 「ごめん、私うるさかった?」 「違うよ。君に言った訳じゃないんだ」 しまった。つい声を出してしまった。後ろであいつがニヤニヤしてる。後でなんかしてやる。 「よし。言うよ。君が好きなんだ。付き合ってくれないか?」 「やっと言ってくれたんだ。気づいてないと思った?そして返事なんだけどよろしくお願いします」 「え?いいの?」 「告白してきたのそっちなのに確認するって。やっぱり涼介君は面白いな」 そう言って彼女は笑った。このきらきら輝く笑顔も僕の飛び上がって喜んでしまいそうな気持ちもずっと忘れないと思う。 「そうだ、家族に帰るって電話したいからちょっと先に言っててくれないか。すぐ追いつくから」 「わかった。早く来てね」 そうして彼女と少し距離が空いたのを見てからあいつに話しかける。 「なあ、貴女のお陰で成功したよ。ありがとう」 しかし一向に返事が返って来ない。いくら呼びかけてもあのうるさい声は聞こえない。 その後、僕があの幽霊を見ることは一度もなかった。でも今だに感謝してるしちゃんと伝えたいとも思ってる。本当にありがとう。
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