鈍感な彼

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私の片想いの相手、蓮君は鈍感です。 私と彼は文芸同好会に入っているのですが、後輩は入らず、先輩も引退してしまいました。なので二人で活動しています。 そんな状況だけでもそういう雰囲気になりそうなのに、彼の態度は普段通りそのものです。 少しアピールしてみたりするのですが、気づいている素振りすらありません。 ***** ある日、私は戦慄しました。なんと、彼に私が描いていたネット小説を勧められたのです。 しかも、その小説は彼に気づいてもらえない腹いせに彼の実名を使った小説でした。内容も私たちに近いものでした。 なにか気づかれたかと思ったけれど、結局、 「面白いから読んでみて」 そう言われただけでした。 私の話を面白いと言ってくれたのは嬉しいけど、気づいてくれなかったのはなんか嫌だったので、内容をさらに私たちに近くしてみました。 ***** 「まだあの話読んでくれてる?」 「うん、そういえばあの男の子蓮と同じ名前だったね」 ちょっと期待してみます。 「そういえばそうだったね。それでさー、最近なんか僕たちの日常みたいでちょっと微笑ましいんだよね」 マジですか。名前も話も気づいて無いんですか。 もうこれは鈍感を通り越して天然なんですかね。いっそのこと天然記念物に登録すべきではないでしょうか。 こうなればと作中の少女を彼に告白させてみました。 ***** 「前に勧めた話なんだけどさ。あの話の女の子がさ男の子に告白したんだよ」 「そうなんだ」 やっとわかってくれたのでしょうか。 「全然好きだなんて気づかなかったよ」 「マジですか」 今日も彼は鈍感です。
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