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なんなのあいつ、彼女いたんじゃないの。
そう思いながら仕舞込んだ指輪を取り出す。
ここからどれだけ時間かかると思ってるんだ。今日は待つって何時間待つ気なんだよ。バカなのかよ。
そう何度も彼に対する罵倒の言葉を叫ぶ私の心とは裏腹に、目からは涙が零れていた。
なりふり構わず家を飛び出し電車に乗る。
なかなか着かず気ばかり焦る。早く確かめたい。彼の気持ちを。
電車が駅に着く、急いで公園に駆け出す。周りに変な目で見られようと構わない。
なんだよ、私。結局彼のことまだ好きだったのか。
そう思うとまた泣けてきて、公園につく頃には目は赤く腫れていて、辺りもスッカリ暗くなっていた。
でも彼は待っていてくれた。
罵倒の1つでもしてやろうと思ったのに、出てくるのは涙ばかりで。
「やっぱり来てくれたか。ゴメンな、迎えにいけなくて。指輪、もう小さくてはめられないだろ」
彼は私の左手を取り指輪をはめる。あの時と同じように。
なにか言いたいのに、私の口からは嗚咽が漏れるだけで。
「あの時のまんまだな」
そういって彼は私のことを抱きしめた。私は抱きしめ返す事しかできなかった。
泣きじゃくる声が響く夜の公園。月明かりがそっと二人を照らした。
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