第1章 祭りの界隈

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大雨洪水波浪警報が発令された時、父と母はこの家の中で雨漏り対策に追われていたという。 こんな天気の中、外に出る馬鹿はおらんやろ。父はそう独りごちながら、何気なく窓の外を見ると、1人の男が海に向かって走っていくのが見えたそうだ。 父は、母に連れ戻してくると言い置き、嵐の中を一人かけていった。 一度何か怒鳴る父の声が聞こえたそうだが、それ以降は雨足が強くなり、母も家事に追われていたため、その後何がどうなったのかはわからない。 父は、夜になっても帰ってこず、朝になって外に出ると、父の漁船だけ消えていたのだ。 母はすぐに警察に捜索願を依頼したが、沖合にも船の残骸すら見つからず、捜索は中止された。 警察の話では、船の周辺に争った痕跡は見当たらず、事故として処理されることになった。
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