第1章 祭りの界隈

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走って走って。 どこをどう乗り継いでいったのか、ヨウスケは東京行きの新幹線の中にいた。 わからない。わからないが、父の死さえ受け入れられないのに、母の再婚など、認められるわけがない。 そして、自分も……。 鞄の中にクシャクシャに丸めた紙切れ。 その中に踊る「解雇」の二文字。。 ふっと自嘲の笑みが溢れる。 父の死、母の再婚。そんなのは言ってしまえば他人事だ。気にしなければ、影響は少ない。 けれど、職がないという事実は直接自分に突きつけられている。自分で解決しないといけないのだ。 これから、どうしようか。 帰ったところで、生活できるのか。 ヨウスケは顔を手で覆った。 懐かしい五月の田園風景が、新幹線の窓の奥へ消えた。
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