第2章 路地裏の猫

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朝は、嫌い。 なぜって、人の寝息がすぐそばにあるから。 「ねえ、そろそろ時間よ」 耳元でささやく。彼はまだ起きない。 はだけたバスローブを直すと、肩を軽く揺すった。 「ね、会長」 んん・・・・・・。 わずかに開いた口から声が漏れる。と思った瞬間、たくましい腕が背中から砂絢(さあや)の体を引き寄せた。 「ふふ、寝ぼけてるんですか?」 「・・・・・・ふん。そうだな。わたしは寝ぼけているんだ」 なおも動きの止まらない腕は背中からわき腹へと移動していき・・・・・・そこに触れそうになったとき、砂絢は手でしっかりと制止する。 「だめ。次いらしたときの楽しみが減るでしょう」 わざと声に吐息を混ぜ、彼に焦点を合わせる。 樹齢千年の老木の風格を兼ね備えた、叡智をたたえた瞳をじっと見つめていると、まるでこちらの胸の内が見透かされているような気分になる。 気恥ずかしい沈黙の後、彼の顔がふっと緩んだ。 「まったく、君はケチくさいな。麗しい美女とひとつ布団の中にいたら、正常な男ならこれくらい当然の行動だよ」
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