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朝は、嫌い。
なぜって、人の寝息がすぐそばにあるから。
「ねえ、そろそろ時間よ」
耳元でささやく。彼はまだ起きない。
はだけたバスローブを直すと、肩を軽く揺すった。
「ね、会長」
んん・・・・・・。
わずかに開いた口から声が漏れる。と思った瞬間、たくましい腕が背中から砂絢(さあや)の体を引き寄せた。
「ふふ、寝ぼけてるんですか?」
「・・・・・・ふん。そうだな。わたしは寝ぼけているんだ」
なおも動きの止まらない腕は背中からわき腹へと移動していき・・・・・・そこに触れそうになったとき、砂絢は手でしっかりと制止する。
「だめ。次いらしたときの楽しみが減るでしょう」
わざと声に吐息を混ぜ、彼に焦点を合わせる。
樹齢千年の老木の風格を兼ね備えた、叡智をたたえた瞳をじっと見つめていると、まるでこちらの胸の内が見透かされているような気分になる。
気恥ずかしい沈黙の後、彼の顔がふっと緩んだ。
「まったく、君はケチくさいな。麗しい美女とひとつ布団の中にいたら、正常な男ならこれくらい当然の行動だよ」
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