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「ま、今日のところはこのくらいに致しましょうか。
お乗りなさい。送りますよ」
「……ていうか、もう乗ってるからはやく出してって!」
砂絢はふるふると震えた。
これだ、これ。
ドエスに天然も入って、この人の言動行動は予測不可能なのだ。
お前は今どこを見て、話していたんだ。
声には出さなかったが、じとっとした視線を送ると、なんとなく伝わったらしい。
くっくっと体を折り曲げて笑っている。
「冗談ですよ。行きますか」
「安全運転でおねがいします」
「さあ、どうでしょうね」
何気に怖いことをさらっと言うと、右へハザードランプを出して、車道へと走り出した。
振り返れば、山の上にひっそりとたたずむラブホテルの錆びれた看板が見える。
この仕事を始めて3年になるけれど、毎回思うことがある。
なぜ、私なのだろう。
ホテルの看板が遠ざかるのを見る度に、砂絢の心の中は虚ろになっていく。
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