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「そういえば、中島が不思議がっていましたよ」
「中島?ってあの新しく来た娘?」
「そうそう。
なんでもここの店には、客と寝ないのに爆発的な人気を誇る嬢がいるらしい。でも男と一つ屋根の下にいて、襲われないというのはあるのかしら? ってね」
「なっ……!?」
砂絢の頬が朱に染まった。
なんてことを言い出すのだ中島は。
そしてそれを本人に伝える安住の底意地の悪さよ。
コホン、と誤魔化しの咳をすると、もごもごと口を動かす。
「ま、まあそれは経験の差というかなんというか。
やっぱりホラ、私たちの仕事ってお客様の疲れを癒したり、現実とは違う空間を提供することが大事じゃない。
その、ねねね寝るとかそういうことだけするのが仕事じゃないわけで。つまり、つまり……えーと」
「つまり、処女ってことですね」
その瞬間、ペーンとハリセンの音が車内に鳴り響く。
「いっ……ハリセン?!」
どこから取り出したのか砂絢の手には手のひらより一回り大きいハリセンが握られていた。
頬と同じくらい真っ赤に染まった目に涙を浮かべて、安住のおでこを二度三度ペチペチと叩く。
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