第1章 祭りの界隈

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いつもは静けさに包まれている港町に、今日は甲高い笛や低い太鼓の音が響いている。 時おり聞こえるパチン、パチンという音は、獅子が口を閉じる時に鳴るものだ。上下左右に首を振り、また傾げ、口を大きく開けてはつと閉じる。 獅子頭の先の長細い風呂敷の中では、数人の男達が一列に並び、足並みを揃えて低くなり、高くなりを繰り返す。 まるで生き物のような動きに、観衆はうっとりと魅入り、通りがかった人も思わず足を止める。 流れるのは、五月の風。 一年に一度だけ。 この港町には、こんな祭りがある。
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