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暗闇の地下鉄
私は階段を降りて目の前の扉から入る。駅のアナウンスが『飛び込みでのご乗車は御遠慮下さい』と言っている。
しょうがないではないか、この電車に乗らなくては間に合わないのだから。
そう思っていたら私のいる場所と駅の空間を遮るかのようにドアが閉まる。そしてゆっくり動き始めた。しかし私は車内の方を見ていたので外の風景が見えない……といっても周りは暗闇だ。なぜ私が車内の方を見ているかというと混雑でそうするしかなかったのだ。
私は冷や汗をかく。周りに見えるのは女性だらけだからだ。ここは『女性車両』ではないのか、と思った。時間的にもその車両は女性専用である。私は気まずいので次の駅で降りようと思った。しかしこの地下鉄はそうしてくれなかった。
『次の駅に向かう線路内で何らかの不具合が起きた模様ですので運行を見送らせてもらいます。ご乗車の皆様には迷惑をかけてすみません』
どうやら何らかのトラブルが起きたようだ。スマホをポケットから取り出し画面を見る。
やはり圏外だった。
「あの……触りましたよね?」
突然、目の前の女子高生に声をかけられる。
「いや、触ってませんよ?」
「痴漢です!!」
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