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ガウン姿になっても、源はすぐに事を始めようとはせずに、ベッドに腰かけて何かを考えていた。
「どうしたの?」隣に座り横顔を見る。彼はなかなか口を開かない。何か言うまで私は待った。
「―――実は僕、体育館に戻ったんだ」
声を発したと思えば、いきなり意味が分からない。
「茜ちゃんとした、体育館の物置。出たあと僕一人でまた中に入った」
「なんで?」
「体育マットについた血を拭きに。茜ちゃん逃げるように出て行っちゃったから知らないと思って」
ショーツに赤い染みはあった。けどマットに漏れていたのには気付かなかった。
「それでわざわざ?なら私に言えば良かったのに。でもほっとくと思うけど」
「だから教えずに僕が濡れ雑巾で拭き取ったんだ」
「源くんがそこまでする必要ないよ。別に大量出血した訳じゃないし。ほんのちょっとでしょ?」
「でも嫌だった。茜ちゃんの血を誰にも見せたくなかった」
「………どうして」
やっと顔が私に向いた。問いの答えが、今にも口から出そうな唇の形になっていたけど、彼はそれを飲み込んだ。
見つめ合ったまま、私も言葉を消した。正解が分からないほうが良い時だってある。
源は口付けをしながら、私をベッドに倒した。
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