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それを見た人は、どう思うか。
・・・・・普通ならば、有り得ないと思うだろう。しかし、実際目の当たりにしているのだから、信じない訳にはいかない。でも、信じられない。
その葛藤の結果──その枝に何か秘密があるのだと無理矢理思い込んでしまうのだ。
不思議な魔法が使える魔法の杖として、認めてしまう。
これにより、ショーは成立。何の疑いもかけられずに、お金を貰うことが出来た。
・・・・・しかし、副作用と言えばいいのか。それを欲しがる困った連中が出てくるのも事実。
私は今、その対応に手焼いているという訳だ。
あのショーの後、杖の秘密をききたがったり、欲しがる輩は沢山いたものの「商売道具なので・・・」と、〝上目遣い〟で断れば、殆どの人が諦めてくれた。
そう──殆どの人が、だ。
───ここまでしつこいのも珍しい。
目の前で両手を合わせる男性と、愉快な仲間たち。コイツらとは、少なくとも数十分は対峙している。
いい加減諦めて欲しい、というのが私の本音だ。
「これでどうだ!!」
サッと、不意に金貨の山が差し出される。
文句は言わせないぞ、とでも言いたいのか、こちらをキッと睨みつけていた。
───何を必死になってるんだろう、コイツらは。
そうか、枝と魔武器の区別すらついていないのか。
タダの枝に大金を積むバカに、内心爆笑してしまう。
しかし、それを表に出すわけにはいかない。
私は表面上は困ったような表情を浮かべ、バカの申し出を丁寧に拒否した。
「え、そんな大金ダメですよ!!これは商売道具ですから、売れないです・・・・・」
「そこを何とか!!無理なら、オレたちのパーティに入ってくれるだけでもいいからさぁ!!」
だが、バカは余程のバカらしい。尚も、食い下がり交渉しようとしていた。
あまりのしつこさに舌打ちしたい衝動を抑えつつ、私はふるふると首を振る。
まだ、売る時じゃないのだ。これは。
「ダメったらダメですー!!」
「頼む!!一生のお願いだ!!」
そう言うと、突然目配せをする四人。
何かするつもりか、と私が身構えた次の瞬間、「お前ら!!」というリーダーの掛け声で、一斉に四人が視界から消えた。
「「「「お願いします!!」」」」
声の元を追うと、そこには地べたでひれ伏す四人の姿が。
───いや待て待て待て!!
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