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〝今度は何を企んでいるのだろう〟
そんな私の思いとは裏腹に、城の案内は意外だと思える程順調に進んでいった。
図書室に大広間、謁見の間などなど、挙げていたらキリがない。相当な広さだと言えよう。
城の中をぐるりと一周、それだけで既に日が傾いてきている。
軽い昼食代わりと手渡されたパンを頬張りながら、
「この後はどこに行くの?」
「んーそうっすねぇ・・・・・」
天井を見上げて唸るクライシュ。わざとらしそうな腕組みが目に付いた。
その仕草で何となく察した私は、彼の横で顔が引きつった。
案の定、その嫌な予感は当たってしまう。
「──じゃ、実力測定っすね!!」
───・・・・・ああ・・・だろうと思った。
騎士団員と一緒っすよ!───そのキラキラした笑顔を、私はきっと忘れないだろう。
実力を知らなければ、上手く利用することは出来ない──まさにその通りだ。
これもウェルバートの指示、それであの微笑みに説明が付く。
どうやら異世界での私は、戦闘は避けられない運命にあるらしい。
───これは自分から飛び込んだ道だけども。
何となく想像は付くが、念のため「実力測定って何するの」と暖かな手を引く。
「んー・・・軽いバトルっすね。大丈夫っすよ、相手はちょっとした魔物っすから!!」
「・・・・・ちょっとした魔物かぁ」
その微妙な言い回しが気になる所だが、それは一先ず置いておいて。
───何気に魔物とはこれが初戦闘なのかもしれない。
不安げな私に対して、「大丈夫っす!!」と再度クライシュに励まされる。
戦闘に不安を感じている、と思われているのだろうがそれは違う。完全な勘違いだ。
魔物とはいえ、生物を殺すことに抵抗?
──それも違う。ここに来てから、不思議と同情云々の感情があまり湧かなくなっている。
・・・・・悲しいかな、殺しても何も感じない。
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