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入口すぐの扉、ロビーのような大広間から繋がるソコが地下への扉らしい。
近づくにつれ、人の声──歓声が聞こえてきた。
「盛り上がってるね、楽しそう」
扉を片手で開けながら、クライシュは乾いた笑い声をあげる。
「見てる方は楽しいっすよ──見てる方だけっすけど」
見てる方だけ、という所を何度も強調して言う。
きっとこの言葉も、現場に着けば意味が分かるのだろう。
キィ、と軋んだドアが開く。
歓声に包まれると同時に、円状の闘技場が視界いっぱいに見えた。
「───ようこそ!! 模擬闘技場へ!!」
そう言ったクライシュの言葉も、ようやく聞き取れる程に、会場は盛り上がっていた。
円形のフィールドを囲むように、階段状で観戦席は設置されている。
流石に満席ではないものの、同じ服装を見に纏った男性たちがそこに座っていた。
私達が入ってきた事にも気づいていない。
中には身を乗り出して見下ろす者もいて、その熱狂的さが窺える。
───なるほど、模擬闘技場か。
地下にこんな施設がある事自体は驚きだったが、〝実際の戦闘を想定した訓練〟と考えるとすんなりと納得した。
クライシュに続いて、空いている前の席へと座る。
手すりに手をかけて見下ろすと、1人の男性が猪のような魔物と戦っていた。
猪、と言っても、地球のソレよりふたまわり以上も大きい。成人男性2人分の身長を超えている。
──そして、何よりも目を引くのは巨大な牙。
「うわぁ・・・・・あの人大丈夫かな」
ボソッと呟いた声に、クライシュがニコニコと笑う。心配は微塵もしていないらしい。
「大丈夫っすよ! あの魔物は召喚師によって呼び出されたものっすから」
召喚師、と無意識に口が動く。
───となると、魔物を召喚して戦わせているという事か。
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