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男性陣からの歓声を受けるクライシュを横目に、私は隠れるようにして、橙色のくせっ毛頭を見上げる。
手を振っているその姿を見ていると、ふとあることに気づいた。
───そういえば、私といても気分が悪そうになっていないな。
抱き上げていたあの時とは大違い。
青ざめていた顔も、今では元気そうに笑っている。それに、無理にしている様子は全くない。
もしかしたら、〝慣れ〟というものなのかもしれない。
「──この子が、次の挑戦者となるコウちゃんっす!!」
ぼーっとその様子を眺めていた私は、いきなり前へと押し出された。
うぁ、と小さな声を漏らし、なされるがままに前に飛び出してしまう。
「え、あ・・・・・えと」
歓声も何もなく、しんと静まり返った会場でしどろもどろになった私の声だけが通る。
「こ、こんにちは・・・・・コウって言います。えっと、今日から王宮で働くことになりました。どうぞよろしくお願いします」
ポカンとした表情の後に、困惑した囁き。皆一様にとるリアクションは同じである。
「──あんな子供が働く? しかも、挑戦者だって?・・・・・何かの間違いじゃねぇのか?」
「いやでも、クライシュさんが言ってんだぞ?次の挑戦者だとよ」
言葉の棘が痛い。
困惑する者もいれば、嫌悪感を隠さずにこちらを睨みつけている者もいる。
───視線が、痛い。
「何歳だよ、あれ。どう見たって、まだガキじゃねぇか」
「ったく、何しに来てんだよ。ここはガキの遊び場じゃねぇってのによ・・・・・クライシュさんも何考えてんだか」
完全なるアウェー感──私はギュッとワンピースの裾を握りしめた。
・・・・・だから嫌だったのだ。ここで紹介されるのは。
どこの仲良し集団にだって、異物が交じれば拒否反応が出てくる。
1度拒否されれば、よっぽどの事がない限り受け入れられることは無いだろう。
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