14.実力測定という名の

10/11
前へ
/387ページ
次へ
眼前には吸い込まれそうな闇。 あそこから魔物が出てくると思うと、ソレが地獄への入り口にさえ見えてくる。 ───まず、初戦であるゴブリン戦はサックリと終わらせよう。準備体操をするように、避けながら隙を見て攻撃すればいい。 身体の余計な力を抜き、自然体で立つ。覚悟を決めて前を見据えると、何処からか青年の声がした。 姿は、ない。 『さあさあ、皆さんお待ちかね!!お次は、今日の目玉である魔物でーす!』 青年の台詞に引っかかった。 嫌な予感が再び湧き上がり、逃げ出しそうになりながらも、じっとその場で待機する。 しかし、私の心臓は忙しなく鼓動を響かせていた。 ───目玉となる魔物が・・・・・ゴブリン? 当たり前だが、たかがゴブリンが目玉になるわけが無い。では、何故青年はそう言ったのか。 それは、突然目の前に現れたモノによって納得した。 「楽しみですねー」と能天気な青年の声──場違いなそれすらも、聞こえなくなるほどの戦慄。 ──誰も声を発しない。否、発せない。 戦闘なんて日常茶飯事、模擬闘技場でも戦い慣れしている筈の騎士団員でさえ、その圧倒的なオーラに息を呑む。 ──最早、笑いながら楽しんでいた面影は全くない。 不自然に静まり返った空間に、聞こえてくるのは荒い息遣いのみ。 対峙する私には、そこで渦巻く大量の魔素が感じられていた。 ───そこに、いる。 自身のつま先から目が離せない。見たくない、向き合いたくないと目を逸らす。 『オオォォオオオオン!!』 途端に響き渡る叫び声。ビリビリと空気が震え、あちらこちらから軋むような音が聞こえてくる。 思わず顔を上げてしまった── 「・・・・・・・・」 予想通り、ソレはゴブリンなんて可愛いものじゃない。───そんな生易しいものじゃない。 身長(おおきさ)はゆうに10mを越している。 辛うじて人型をしているが、ゴブリンというよりも鬼に近い見た目だ。 棍棒代わりに持つのは、1本の巨大な斧。刃に付着している血は、既に赤黒く変色していた。 そして、ゴブリン特有の緑色の肌・・・・・ではなく発達した筋肉が盛り上がっているのは赤黒い肌。 浮き出ている血管が、更に魔物の迫力を増している。 グロテスクとも取れる姿は、この場にいる全員に衝撃を走らせた。
/387ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5933人が本棚に入れています
本棚に追加