14.実力測定という名の

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──震えていた身体が落ち着いた。 魔族だからか、暫くすると心の中に占めていた恐怖は鎮圧され、平常心が戻る。 ・・・・・不思議と何も思わない。 大丈夫だ、もう怖くない。 その後に直ぐに感じたのは、ふつふつと湧き上がるクライシュへの怒りだった。 魔族の特性によりすぐさま平定されるソレだが、小さな怒りとして長引く。 ───・・・・・騙された。あいつ・・・・・!! が、青年同様にその姿はない。ということは、答えは一つ。 「・・・・・ちっ!!」 魔物の声に混じり、舌打ちがやけに大きく響く。──それで更にイラついた。 ───逃げやがったな。 〝逃げた〟──その事実で、小さな怒りだったモノが膨れ上がった。しかし再度、一定まで抑えられる感情。 ──・・・・・悲しいかと問われれば、その答えは〝悲しくはない〟 実力測定としては少々(・・)やり過ぎだが、それに見合う実力を見出されているのなら仕方ない。 ──ただ、事前に誤った情報を伝える、という事に怒りを感じた。 その時のクライシュの顔を思い出したが、嘘をついているようには見えない。 しかし、その言葉は〝嘘〟だった。 ───デジャヴを感じた。私は、騙されてものすごく怒った記憶がある。 ───・・・・・何処でだろう。前にもこんな事があったような気がしなくもない。・・・・・会社だったっけ? 暫し考えて、すぐさま否定。どうしても思い出せない。 まあいい、と自身の中で無理に一区切りをつけた。 『ウォォオオオン!!』 突如、魔物が雄叫びを上げて、こちらへと突進してくる。 ──しっかりとその姿を捉えて、最小限の動きだけで避けた。 集まる視線を一身に受け、私は長く息を吐く。どうやら、うだうだ悩む時間は用意されていないようだ。 体内で巡る自身の魔素が、その勢いを増す。 身を低く屈め、対戦相手を見つめながら私は言った。 「──やってやんよ・・・・・期待通りにね」
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