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フィールドの中心へと向かったコウを見送り、クライシュは〝計算通り〟だとほくそ笑む。
ウェルバートからの指示ではあったが、無事にここへと連れ込む事が出来て良かった。
失敗回避からの安堵感で、強ばっていた身体の力が抜ける。
「・・・・・これでひとまず安心っすね」
初めはどうなるかと思っていた監視だが、時が経つにつれて身体も順応したらしい。
多少の気分の悪さはあるものの、あの時のような激しい吐き気などはない。
──この程度なら、これからも監視役を続けていく事が出来るだろう。
手すりにゆったりともたれ掛かり、微笑むクライシュ。安心感からか、その表情は今までよりも柔らかい。
そんなクライシュに話しかける者がいた。側の観戦席に座っていた騎士団員の1人である。
彼は数人の騎士団員と共に立ち上がると、クライシュを扉の外へ行くよう促した。
「──クライシュさん、本当に次の相手はあの子供なんですか・・・・・!?」
バタン、と扉が閉じられた瞬間の第一声はソレだった。
丁寧な言葉ではあるが強い口調。
焦って訴えかけるように言うその台詞に、クライシュは首を傾げた。
これは事前に打ち合わせをした計画の筈だ。何故、そこまで乱れているのだろうか。
───・・・・・ちゃんと、全員と打ち合わせをした筈なんすけどねぇ・・・・・?
それが1人ならば、何かの間違いということもあっただろう。
「・・・・・ちょーっと、これはおかしいっすね」
──だが、それは1人だけではなかった。見ると、周りにいる騎士団員全員が、困惑した表情を浮かべている。
再度、騎士団員が念を押してきた。
「本当に本当に本当に!! 次は、クライシュさんじゃないんですか!?」
しつこい質問にクライシュは顔を顰める。流石にこれにはウザイと思ってしまった。
げんなりとした顔で、確認の為の質問を返す。
「───間違いなく相手はあの子っすけど? ・・・・・ゴブリンを召喚するって話っすよね」
〝子供を連れてきた次の相手はゴブリン〟
それで戦わせる段取りだった筈だ。倒せたら次、倒せたら次という連戦で。
これには勿論重要人物であるノノも参加していた筈。
───まさか、またノノが何か・・・・・
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