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「まさか・・・・・」と呟いたクライシュに、残念ながら、と騎士団員は言う。
「・・・・・そのまさかです」
クライシュは黙って頭を押さえた。過去に何度も起こったハプニング、それにはノノ絡みというのが多い。
ノノ=シノサキ
僅か20歳にして、王宮専属魔導師のうちの1人──召喚魔法を主魔法とする天才。
その生涯は謎に包まれ、知る者はいない──ミステリアスな天才召喚師ノノ。
───だが。
その実態はただのおっちょこちょいである。
──つまり、小さなミスが多い。
伝言を頼めば、必ずと言ってもいいほど一単語間違えて伝え、魔法陣学での誤字脱字も多い。
しかも、直らないのだから余計にタチが悪い。
・・・・・とにかく、挙げればキリがないのだ。
まともに出来ることが召喚魔法のみ、と言っても過言ではないというポンコツぶり。
騎士団員全員が、またか、という表情をするのも納得である。
それで、とクライシュが話を戻す。
「──今回はどんなミスをしたんすか」
一般人には見当もつかない。ノノに関しては、何が起きても不思議ではないと考えた方が良い。
その質問に騎士団員が困ったように顔を見合わせる。そして、恐る恐るクライシュと目を合わせた。
代表の1人が小さく言う。
「・・・・・相手が」
「え?」
あまりにも小さすぎて聞き取れない。クライシュが耳を近づけようとした。
その瞬間──
「聞こえな──っ!?」
───地が震えた。
少し驚いたものの、流石は騎士団。クライシュ同様に、少しも動揺していない。
・・・・・というよりも、何か知っているような顔つきで扉の向こうを見つめていた。
「・・・・・そう言うことっすか」
それを見たクライシュが何かを察する。
それに続いて、連続した衝突音と悲鳴に近い声が聞こえてきた。
響く音は、明らかにただのゴブリンが為せる音ではない。
──扉の向こうで何かが起きているのは、誰にとっても明白だった。
ゆっくりと騎士団員の方を向くクライシュ。口元は弧を描いてはいるが、その目は笑っていない。
「鬼・・・・・」
誰かが呟いた。
その呟きに、数人がゴクリと唾を飲み込む。騎士団員たちの顔は、一様に青ざめていた。
「───じゃ、後で説明・・・・・よろしくっすね?」
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