15.戦闘

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「まさか・・・・・」と呟いたクライシュに、残念ながら、と騎士団員は言う。 「・・・・・そのまさか(・・・)です」 クライシュは黙って頭を押さえた。過去に何度も起こったハプニング、それにはノノ絡みというのが多い。 ノノ=シノサキ 僅か20歳にして、王宮専属魔導師のうちの1人──召喚魔法を主魔法とする天才。 その生涯は謎に包まれ、知る者はいない──ミステリアスな天才召喚師ノノ。 ───だが。 その実態はただのおっちょこちょい(・・・・・・・・)である。 ──つまり、小さなミスが多い。 伝言を頼めば、必ずと言ってもいいほど一単語間違えて伝え、魔法陣学での誤字脱字も多い。 しかも、直らないのだから余計にタチが悪い。 ・・・・・とにかく、挙げればキリがないのだ。 まともに出来ることが召喚魔法のみ、と言っても過言ではないというポンコツぶり。 騎士団員全員が、またか、という表情をするのも納得である。 それで、とクライシュが話を戻す。 「──今回はどんなミスをしたんすか」 一般人(クライシュ)には見当もつかない。ノノに関しては、何が起きても不思議ではないと考えた方が良い。 その質問に騎士団員が困ったように顔を見合わせる。そして、恐る恐るクライシュと目を合わせた。 代表の1人が小さく言う。 「・・・・・相手が」 「え?」 あまりにも小さすぎて聞き取れない。クライシュが耳を近づけようとした。 その瞬間── 「聞こえな──っ!?」 ───地が震えた。 少し驚いたものの、流石は騎士団。クライシュ同様に、少しも動揺していない。 ・・・・・というよりも、何か知っているような顔つきで扉の向こうを見つめていた。 「・・・・・そう言うことっすか」 それを見たクライシュが何かを察する。 それに続いて、連続した衝突音と悲鳴に近い声が聞こえてきた。 響く音は、明らかにただのゴブリンが為せる音ではない。 ──扉の向こうで何かが起きているのは、誰にとっても明白だった。 ゆっくりと騎士団員の方を向くクライシュ。口元は弧を描いてはいるが、その目は笑っていない。 「鬼・・・・・」 誰かが呟いた。 その呟きに、数人がゴクリと唾を飲み込む。騎士団員たちの顔は、一様に青ざめていた。 「───じゃ、後で説明・・・・・よろしくっすね?」
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