15.戦闘

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観客(ギャラリー)から、初めて罵声以外の声が上がった。続く困惑した囁き声は、こちらを心配するものへと変わっている。 喜ばしいことに、非難するような声はもう聞こえてこなかった。 ──が、ほっとする時間もないようだ。 下を見ると、大きく抉れた地面。無意識に身震いした。 「・・・・・うっわ」 それを見れば誰でも、当たった瞬間あの世行きだ、という事くらいはわかるだろう。 眼下からは、既に魔物が巨大な手を伸ばしてきている。咄嗟に私は叫んだ。 「《固定》──っ!!」 だが、魔物の手の前に固めた薄い膜は、音もなくあっさりと破られる。 やはり、その場の魔素だけでは強度が弱いようだ。 「・・・・・ちっ」 短い舌打ち。 固定した魔素の床に、片手を付き身体を反転。そこから飛び退くことで、魔物から更に離れる。 『グォォオオァアアア!!』 醜く歪んだ顔を更に歪ませ、魔物が怒り狂った叫び声をあげた。自分よりも小さな存在なのに、捕まえることが出来ないというもどかしさ。 なんとか獲物を仕留めようと、めちゃくちゃに腕を振り回す。 ──その巨体に見合わず、そのスピードはアルマダの剣よりも速い。 「──っと」 考えるよりも先に、身体が動いた。《固定》された空中で、体勢を立て直して間一髪。 ──その真下を赤黒い腕が、線として通り過ぎてゆく。 再度あがる観客の驚きの声を聞きながら、私は自分でも驚いていた。 ・・・・・以前では考えられないような、人間離れした動き。アルマダとの戦闘時よりも、そのキレが増したような気もする。 ───気の所為、だろうけど。 どこか引っかかる異変に足を止めると、すぐさま次の攻撃が来る。 地を蹴ってそれを避けるが、そこには既に大きな影。 「いつの間に・・・・・っ」 あんな巨体に何故、ここまでのスピードが出せるのか、甚だ疑問である。
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