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「・・・・・なんだよ、これ・・・」
突然の出来事は、騎士団でさえも動揺で慌てふためいたようだ。
降りかかった火の粉を払いながら、必死の形相で我先にと出口へと向かう。
「おいッ!! これ水魔法で消えねーぞ!? どうなってんだよ!! てか、あっつ!」
「知るかバカ!! とっとと脱いどけ!!」
飛び交う怒声や叫び声。迫り来る炎を魔力の壁で防ぐも、直ぐに魔力ごと溶かされ使い物にならなくなってしまう。
練習を積み重ね分厚くなった壁も、この業火の前では一時しのぎにしかならない。
「──ノノさんとクライシュさんは!? 誰か知らないのか!!」
「とにかく避難だ避難!! 離れないとヤバいぞ、これ・・・・・ッ!!」
炎に有利な筈の水魔法でさえ、圧倒的な魔力差がその効果を上回る。
その上、騎士団副団長であるクライシュも、王宮専属召喚師であるノノもいない。
──詰まるところ、それは騎士団員たちには打つ手がないことを示していた。
「・・・・・こんなの、聞いてねぇ」
そう絶望するように1人が呟けば、それは連鎖し全員の不安を煽る。
「てか、絶対あのガキの仕業だろ」
「そういや、王宮で仕事するって言ってたよな・・・・・ヤバくね? 関わりたくねーよ」
「純粋にスゲーけど、これじゃあな・・・・・」
「正直、俺も怖いわ。こんな幼女見たことねぇし」
一瞬にして行われた出来事は酷く印象に残るモノ。
幼女らしからぬ圧倒的な力は、異物として記憶される。
そうして、自分よりも強い者を無意識に恐れてしまう。
「───化け物かよ」
それを否定する者は誰もいなかった。
──その単語が指すのはどちらなのか。
火の海化しているフィールドは最早、誰がいるのかすら分からなくなっている。
そんな信じ難い景色を一瞥し、最後の1人が扉を閉めた。
パタン、と反響する音。
残されたのは、所々の損傷が目立つ会場と化け物2人のみ。
──炎の勢いは増すばかりである。
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