16.出会い

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自身の周りを避けるようにして立つ火柱。暴れまわっていた魔物は、私の目の前・・・・・今炎の中にいる。 『・・・・・グォォオオアアア・・・ァア』 魔物の断末魔の叫びは、想像以上にひどく弱々しいものだった。 終わりを見届けた私は── 「・・・・・よし、私の勝ち・・・」 ドサリ、と安堵感と共に膝から崩れ落ちた。身体を丸めて(うずくま)り腕を押さえる。 ざらりとした地面の感触が頬から伝わってくる。勢いが弱まらない炎が、瞳の奥に焼き付いた。 ───・・・・・おかしい。身体の中が熱い。 「・・・・・止めなきゃ、いけないのに」 止めないと、危ないのに。 ───なんで更に溢れてくるのだろう(・・・・・・・・・・・・・・)。 身体の中で沸き立つ黒い魔素。それは外へ放出される事で消費されるものの、瞬く間に体内でその量を増す。 ──消費される以前よりも多く。 意識的に押さえていないと、その全てを流れ出しそうになる。 ・・・・・それは魔素を《解》することすら、厳しいものにさせていた。 「───誰か」 希望など少しもない──が、それでもすがりつきたい。 崩れる魔物だったモノ(・・・・・・・)が、大きな音と共に地面を揺るがす。 ・・・・・その音を最後に、私は目を閉じた。 ──意識が無くなれば炎は消えてくれると信じて。 願わくば、目を開けたら全てが元に戻っていますように。──魔素が、抑え込まれていますように。 暗闇が視界を塞ぐ。激しい炎の光が瞼の奥に見えた。 ──意識が落ちる直前、不意にひんやりとした手が私の頬に触れる。 誰かがそこに、いた。 誰だ、と朦朧とした頭で考えるが、答えは出ない。頬の冷たい感触だけが、すっと染み込む。 ───誰だろう、この人は・・・・・ 激しく炎が爆ぜる音の中。何処からか、慈しむような声が聞こえた。 「───あとは僕に任せて、今はゆっくりお休み」 耳に心地良い声。導かれるように、ゆっくりと意識を落とす。 ──不思議とそれは眠りにつくような穏やかさがあった。
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