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『変異型:血赤化巨人』
巨大なオーク種の王であり、その変異体。
分厚い赤黒い肌は鋼鉄製の剣をもへし折り、並の刃物では傷一つ付かない。
しかし、どんなに堅硬な鉱物を使った武器でも、致命傷には至らないだろう。
その為、魔法攻撃が有効だと言われている。
知能は大して高くないが、その打撃力は凄まじい。
その拳に触れた瞬間身体は粉砕され、汚い花火となって散るだろう。
その上、俊敏性も高い。目で追えないというわけではないものの、高い攻撃力を併せ持つとなると、それは脅威になりうる。
一般的な冒険者では、まず出会うことは無い。希少なこれが生息するのは、魔素濃度が高い地域である。
普通は、Sランク冒険者が3人がかりで討伐するものだが──
「・・・・・、なんで幼女1人にやらせようとしたんですかねぇ?」
「それが雇う基準だ、諦めろ」
サラサラと書類に何かを書き込むと、「それに死ななかったんだからいいだろ」と次の書類へと手を伸ばす。
「──つまりは殺す勢いだったと」
「当たり前だ」
涼しい顔でウェルバートは即答した。──その言葉は、決して冗談に聞こえない。
あの程度をソロで勝てないと話にならない──そういう事らしい。
何という鬼畜。
───十中八九、成功するとは思ってなかっただろうな。
そんな鬼畜野郎は、不意に手元から顔を上げると意地悪い笑みを見せる。
「ま、採用試験は無事合格だ。詳細はまた後で話そう」
「・・・・・、楽しみに待ってます」
若干の不服を無理矢理の笑顔で噛み潰し、監視役のクライシュと一緒に出ようとドアノブに手をかける。
出る直前、その背中に心底愉快そうな声が届いた。
「──因みに、模擬闘技場の修理代は給料から引いていくからな」
「・・・・・・・・」
無言。
バンッとわざと大きな音を立てるようにして、扉を閉める。──まさか、ここまで幼女に世知辛い世の中だとは。
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