16.出会い

5/21
前へ
/387ページ
次へ
変異型:血赤化巨人(キングオーク・ヴァリアント)』 巨大なオーク種の王であり、その変異体。 分厚い赤黒い肌は鋼鉄製の剣をもへし折り、並の刃物では傷一つ付かない。 しかし、どんなに堅硬な鉱物を使った武器でも、致命傷には至らないだろう。 その為、魔法攻撃が有効だと言われている。 知能は大して高くないが、その打撃力は凄まじい。 その拳に触れた瞬間身体は粉砕され、汚い花火となって散るだろう。 その上、俊敏性も高い。目で追えないというわけではないものの、高い攻撃力を併せ持つとなると、それは脅威になりうる。 一般的な冒険者では、まず出会うことは無い。希少なこれが生息するのは、魔素濃度が高い地域である。 普通は、Sランク冒険者が3人がかりで討伐するものだが── 「・・・・・、なんで幼女1人にやらせようとしたんですかねぇ?」 「それが雇う基準だ、諦めろ」 サラサラと書類に何かを書き込むと、「それに死ななかったんだからいいだろ」と次の書類へと手を伸ばす。 「──つまりは殺す勢いだったと」 「当たり前だ」 涼しい顔でウェルバートは即答した。──その言葉は、決して冗談に聞こえない。 あの程度をソロで勝てないと話にならない──そういう事らしい。 何という鬼畜。 ───十中八九、成功するとは思ってなかっただろうな。 そんな鬼畜野郎は、不意に手元から顔を上げると意地悪い笑みを見せる。 「ま、採用試験は無事合格だ。詳細はまた後で話そう」 「・・・・・、楽しみに待ってます」 若干の不服を無理矢理の笑顔で噛み潰し、監視役のクライシュと一緒に出ようとドアノブに手をかける。 出る直前、その背中に心底愉快そうな声が届いた。 「──因みに、模擬闘技場の修理代は給料から引いていくからな」 「・・・・・・・・」 無言。 バンッとわざと大きな音を立てるようにして、扉を閉める。──まさか、ここまで幼女に世知辛い世の中だとは。
/387ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5934人が本棚に入れています
本棚に追加