5934人が本棚に入れています
本棚に追加
あれでもない、これでもない──と、そうして歩き回ること数十分。
あまりにも膨大な量の本に、私はへたり込んでいた。ごしごしとローブの袖で目を擦る。
───・・・・・見つからないってこれ・・・
下段を探すだけでも(精神的に)疲れるのに、上段も探すのは無謀というものだろう。
当然、この世界に図書館にあるようなパソコンはなく──そうなれば、自力で探さなければいけないわけで・・・・・
「・・・・・それは無茶な話だな」
そんなことは馬鹿でもわかるというもの。
雲行きが怪しくなりため息をつく。このままでは、時間がかかり過ぎてしまう。
どうしたものかな、と悩んでいると、クライシュとは違う魔素の気配が近づいてきた。
少しして、何やらクライシュが止めるような声も聞こえてくる。
どちらも小声だが揉めているようだ。相手側の声は、クライシュとは違って少し高い。
───・・・・・子供か?
「・・・・・・・・」
少し考えた結果、一応こちらの境界を周りと一定に馴染ませておく。これで視界に入りさえしなければ、そう簡単に見つかりはしないだろう。
恐らく危険人物ではないだろうが、まずは様子見だ。
──子供にしては多めの魔素量。それは迷う事なく本棚の森を進み・・・・・立ち止まった。
真っ直ぐに目的の本の元へと向かい、それをその場で読む──そんな様子が容易に浮かんできた。
ふむ、と私は感心する。
───・・・・・慣れてるな。
特に、迷いなく目的地に向かうその行動──何処にどんな本があるか分かっている証拠である。
推測に過ぎないが、クライシュと面識がある事も含めて考えると、多分この城の関係者だろう。
そして、この図書室の常連者でもある。
──それに加え、もしも子供だとしたら選択肢はかなり絞られる。
───・・・・・いや、一択かもしれない。
息を潜めた私の脳内に浮かんできた言葉。
〝ランバディア帝国 王子〟
それでほぼ間違いないだろう。
最初のコメントを投稿しよう!