16.出会い

9/21
前へ
/387ページ
次へ
──まだ気配は動いていないようだ。 それを確認し、本棚の裏から回り込むように近づく。 足音を立てないようこっそりと距離を縮め、あっという間に残り数メートル。 隔たりが本棚一つとなった所で、小さく一息ついた。 ──なんでコソコソとしているのか、と問われればそれまでなのだが・・・・・。 ───・・・・・まあ、何となく? 耳をすませば、微かに紙の擦れる音が聞こえる。 それで確信した──この裏にいると。 一歩一歩慎重に踏み出し、影からそーっと覗くと、艶やかな銀髪がサラリと見えた。 「・・・・・・・・」 そこに座っていたのは10歳程の少年。 ・・・・・ひと目でウェルバートの子供だとわかった。 ───異世界って何でこう・・・・・顔立ちが整っている奴ばかり何だろうな。 いやはや羨ましい限りだ。 ビスクドールのような精巧な美しさ、しかしそこには鋭利な刃のような冷たさがある。 本に落とされた蒼い瞳には、長い睫毛が縁られていた。 良くも悪くも、所々がウェルバートに似ている。 ───・・・・・さすが遺伝。 妙なところで感心しながら、美少女のようなその横顔を無遠慮に眺め回す。 自分でも失礼だとは思うが、美しいものはついつい魅入ってしまうのだから仕方ない。 じっと見つめていた私は、気づかなかった──思わず自身が身を乗り出していた事に。 ───そして既にバレていた事に。 静かな空間に突如響きわたったのは、声変わりのしていない少年の声。 「──そこで見ている奴、いい加減に出てこい」 「ひゃあ!?」 警戒した声音に、トスン、と驚いて尻餅をついた身体。衝撃によって、曖昧にしていた境界も元に戻る。 何故バレたし──私は、慌てて変な声を出した口を押さえた。 心臓がバグバクと煩い。きっと今、私の顔は赤面していることだろう。 そんなことはお構い無しに、美少年はつかつかと近づいてくる。高い背が照明を遮り、私の顔に影を落とした。
/387ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5934人が本棚に入れています
本棚に追加