16.出会い

10/21
前へ
/387ページ
次へ
彼は腕組みをして、扉の方向を横目で見やる。・・・・・確か、そこはクライシュが待機している場所だ。 一拍の間、視線を戻して少年が言う。 「・・・・・、侵入者では無さそうだな」 確かに、侵入者がいればクライシュが黙っていないだろう。そこにいる、ということは少なくとも怪しい者ではないという事。 しかし、こんな可愛らしい(・・・・・)幼女の何処が侵入者にみえるのだろうか。 ──目が節穴なのか? 「取り敢えず立て──聞きたいことがある」 そう言うと、ほら、と手を差し出された。あまり骨張っていないほっそりした色白の手。 素直にそれに応じようとして、一瞬、脳内を横切った。 ───・・・・・何か企んではいないか? 私をこんなにも疑っているのに、何もしないわけが無い。 その手を取ってもいいのだろうか、と迷っていると、遅い、と無理矢理腕を引っ張られて立たされた。 掴まれた所が若干痛い。 「おわっと・・・・・危ないなぁ」 「お前が遅いからだ」 子供にしては意外にも力が強い。──いくら幼いとはいえ、軽々と人を引っ張り上げたのだから。 ・・・・・これもウェルバートの子供だから、というのか。 掴まれた部分をわざとらしく撫でながら、そのすまし顔を見上げる。 綺麗な顔なのに笑わないとは、なんと勿体無いことだろう。 「・・・・・で、聞きたいことって?」 相対する両者の間には、何故か険悪な雰囲気。・・・・・主に少年が刺々しいのだが。 決して私が睨んでいる訳では無い。相手が睨んでくるから、仕方なしに目を見つめているだけだ。 「・・・・・っ」 物怖じせずに見据える私に何を思ったのか、目をそらす少年。よく見れば、耳の端が赤らんでいる。 ・・・・・おい。
/387ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5934人が本棚に入れています
本棚に追加