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彼は腕組みをして、扉の方向を横目で見やる。・・・・・確か、そこはクライシュが待機している場所だ。
一拍の間、視線を戻して少年が言う。
「・・・・・、侵入者では無さそうだな」
確かに、侵入者がいればクライシュが黙っていないだろう。そこにいる、ということは少なくとも怪しい者ではないという事。
しかし、こんな可愛らしい幼女の何処が侵入者にみえるのだろうか。
──目が節穴なのか?
「取り敢えず立て──聞きたいことがある」
そう言うと、ほら、と手を差し出された。あまり骨張っていないほっそりした色白の手。
素直にそれに応じようとして、一瞬、脳内を横切った。
───・・・・・何か企んではいないか?
私をこんなにも疑っているのに、何もしないわけが無い。
その手を取ってもいいのだろうか、と迷っていると、遅い、と無理矢理腕を引っ張られて立たされた。
掴まれた所が若干痛い。
「おわっと・・・・・危ないなぁ」
「お前が遅いからだ」
子供にしては意外にも力が強い。──いくら幼いとはいえ、軽々と人を引っ張り上げたのだから。
・・・・・これもウェルバートの子供だから、というのか。
掴まれた部分をわざとらしく撫でながら、そのすまし顔を見上げる。
綺麗な顔なのに笑わないとは、なんと勿体無いことだろう。
「・・・・・で、聞きたいことって?」
相対する両者の間には、何故か険悪な雰囲気。・・・・・主に少年が刺々しいのだが。
決して私が睨んでいる訳では無い。相手が睨んでくるから、仕方なしに目を見つめているだけだ。
「・・・・・っ」
物怖じせずに見据える私に何を思ったのか、目をそらす少年。よく見れば、耳の端が赤らんでいる。
・・・・・おい。
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