5934人が本棚に入れています
本棚に追加
「へぇー王子様だったんだぁ、すごいねー!!」
「・・・・・別に凄くなんかない」
無邪気に褒めると、何故かベルセルトは表情を暗くする。続いて、ボソッと呟いた言葉には、何処かしら重い影があった。
───・・・・・ん?
その変わりようが気になった私は、ベルセルトの顔を覗き込む。どこか苦しげなソレに、少し胸が締め付けられた。
「ベル君? どーしたの?」
そう聞けば、何でもない、とあっさり元に戻った。早く教えろと言うように腕を組み、返事を促すベルセルト。
・・・・・その生意気な態度に変わりはないようで。
「とゆーか、誰がベル君だ」
「んーと、ベルセルトだからベル君。これから、ひとつ屋根の下で住むわけだし、呼びやすさは大切だよね!」
ね、と同意を求めるように微笑むと、グッと言葉に詰まるベルセルト。
言い返せずに流されていた彼だったが、ふとある事に気づいてハッとした表情になった。
「ここに住むだって!?」
こくん、と頷く。それは紛れもない事実である。
「私はコウ。つい先日、ウェルバートに雇われたんだ」
そう言えば、ベルセルトはとても意外そうな顔をした。信じられないという目付きで、私から目を離さないでいる。
「あの父様が・・・!?──しかも、コウって・・・・・闘技場を破壊したのはお前だったのか!?」
「ええっと、少ししか壊してないよ!? 少しだけだよ!?」
そこを勘違いしてはいけないわけでして。
その言い方だと、まるで全てを破壊したみたいじゃないか。失礼な、そんな破壊神のような真似はしない。
──それよりも、何とまあ噂の早いこと早いこと。
まさか、全く関係の無い筈の王子にまで知られていたとは。・・・・・そうなれば、もはや知らない者はいない、と考えていた方が良さそうだ。
腕を組み、小さく呟くベルセルト。
「──・・・・・父様が雇ったんなら、大丈夫か・・・・」
最初のコメントを投稿しよう!