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ひとまず疑いは晴れたようで、心做しか柔らかくなった表情でベルセルトは聞く。
「・・・・・で、コウはここで何をしているんだ?」
「──種族に関しての本を探してるの。とぉーっても古い本がいいんだけど・・・・・」
なかなか見つからなくてね、と苦笑。
「はあ?」
何でまたそんな・・・・・──そう言いたいのはよく分かる。・・・・・あからさまにそんな表情をしているしな。
幼女は絵本以外を読まないとでも思ったのか、少年よ。
拍子抜けしていたベルセルトは、暫く固まっていたが不意に我に返った。そうして、何も言わず足早にこの場を去る。
───・・・・・んん?
何故か1人取り残された私は、ただ呆然と立ち尽くすのみ。何も言われていないのだから、どうしようもない。
どうすればいいのだろう、と途方に暮れていたが、直ぐにベルセルトは戻ってきた。
──両腕に大量に積み上げられた本を、必死に抱きかかえて。
その1冊1冊が広辞苑のように分厚い。
身長を優に超える本のタワーがグラグラと揺れる度に冷や汗をかいた。
見ているこっちがハラハラする。
「ちょっ、ベル君!? 危ないよ!?」
「・・・・・っこれぐらいへーきだ」
そんな声も強がっているようにしか聞こえない。
力持ちだというのは分かったが、流石にこれは危険だろう。
ふらふらと危なげに歩くベルセルト。──と、不意にその歩みが乱れた。
「──うぁっ!?」
かくん、と前のめりになる。当然、重力に抗える筈がなく──
頭上へと落下する本。それらを纏めて《固定》しようとした私の手が止まる。
それは、突然現れた別の魔素。
「何やってるの、兄さん」
背後から聞こえてきた声と同時に、宙に放り出されていた本はその場で動きを止める。
──後ろから伸びた魔素のようなものが、一つ一つの本を包み込んでいた。
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