16.出会い

14/21
前へ
/387ページ
次へ
私にはハッキリとそれが見えるが、傍から見れば浮遊しているように見えるだろう。 ───これも、魔法? 詠唱も無ければ、魔素が何かに変わった様子もない。ただ単に濃いめの魔素が本を支えているように見える。 惚けている私に、もう一人の少年は優しく話しかけた。 「大丈夫? 怪我はない?」 「・・・・・うん、ありがとう」 やはりその顔はウェルバートに似ている。しかし、若干のたれ目が柔らかな雰囲気を醸し出していた。 ストレートのベルセルトとは違い、銀髪にはくるくると天然パーマらしきクセがある。 一言で言えば、まさに天使そのもの。兄と同じく、美少女にも見えてくる。 ───・・・・・ベルセルトの弟、ということは。まさか、この人も・・・・・? 恐らくは王子の1人か。 ベルセルトといい、この天使といい・・・・・流石に一日の遭遇率が高い気がするのですが神様。 ──展開が急すぎてついていけない。 無事に本の落下を全て止めた少年だったが、唐突にその美しい顔が苦痛に歪んだ。 「──っはあ、もう無理。きつい」 少年の手に合わせて、ゆっくりと降りてくる本。やがて、ドスンとそれらは床に落とされた。 はぁ、と後ろから疲れを含んだため息が聞こえてくる。 「全く、兄さんは相変わらずなんだから・・・・・こんな小さな子に怪我させたらどうするの」 危ない所だったんだから、と弟君はご立腹のご様子。 聞けば、あれは魔法ではなく魔力操作の一つらしく、魔力を物体に纏わせて浮かせるとか。 ──因みに、普通の子供は精々本1冊を30cm浮かせるのが限界らしい。 ・・・・・さすが、ウェルバートの血を引くだけはある。
/387ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5933人が本棚に入れています
本棚に追加