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私にはハッキリとそれが見えるが、傍から見れば浮遊しているように見えるだろう。
───これも、魔法?
詠唱も無ければ、魔素が何かに変わった様子もない。ただ単に濃いめの魔素が本を支えているように見える。
惚けている私に、もう一人の少年は優しく話しかけた。
「大丈夫? 怪我はない?」
「・・・・・うん、ありがとう」
やはりその顔はウェルバートに似ている。しかし、若干のたれ目が柔らかな雰囲気を醸し出していた。
ストレートのベルセルトとは違い、銀髪にはくるくると天然パーマらしきクセがある。
一言で言えば、まさに天使そのもの。兄と同じく、美少女にも見えてくる。
───・・・・・ベルセルトの弟、ということは。まさか、この人も・・・・・?
恐らくは王子の1人か。
ベルセルトといい、この天使といい・・・・・流石に一日の遭遇率が高い気がするのですが神様。
──展開が急すぎてついていけない。
無事に本の落下を全て止めた少年だったが、唐突にその美しい顔が苦痛に歪んだ。
「──っはあ、もう無理。きつい」
少年の手に合わせて、ゆっくりと降りてくる本。やがて、ドスンとそれらは床に落とされた。
はぁ、と後ろから疲れを含んだため息が聞こえてくる。
「全く、兄さんは相変わらずなんだから・・・・・こんな小さな子に怪我させたらどうするの」
危ない所だったんだから、と弟君はご立腹のご様子。
聞けば、あれは魔法ではなく魔力操作の一つらしく、魔力を物体に纏わせて浮かせるとか。
──因みに、普通の子供は精々本1冊を30cm浮かせるのが限界らしい。
・・・・・さすが、ウェルバートの血を引くだけはある。
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