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その声に狼狽えた様子のベルセルトは、気まずそうに伏し目がちで言う。
「わ、悪い。・・・・・その、大丈夫か」
「・・・・・、大丈夫大丈夫! ベル君もこんなにいっぱいありがとーね」
床に散らばった本──それは、全て『種族』に関するものだった。
あんな短時間の間に、ベルセルトは探してきてくれたのである。
ニコニコと笑顔を向けると、すっと目を逸らす。照れているのだろうか、頬が赤い。
「・・・・・べ、別に。・・・・、お前の為に探してきたわけじゃねーし! そこに、たまたまあっただけだし!!」
「・・・・・ぷはっ」
「な、に・・・・・笑ってんだ!!笑うな!!」
その顔が意外過ぎて、思わず素で笑ってしまった。ごめんごめん、と謝りながら口を押さえる。
───そうか、ツンデレか、ツンデレなのか!!
「コウちゃん」
そんなベルセルトの照れる様子を楽しんでいると、それを見ていた弟君が間に割り込んできた。兄の視界を塞ぐようにして、前に立つ。
「ごめんね、兄さんは異性慣れしてないから・・・・・」
もう勘弁してやって?、と困ったように言う。どうやら弟君が言うには、ベルセルトは異性に対しては上手く接する事が出来ないらしい。
要は純粋だと。
───・・・・・なるほど、道理で簡単に照れると思った。
そう言う弟君は慣れているようで、手慣れた様子で接してくる。
海を思わせるような蒼い瞳が覗き込んだ。その微笑みだけで、ほんわり暖かい気持ちになった。
・・・・・こやつ、やるな。
「コウちゃんだっけ? 僕は第二王子、ルーシュ=ローゼン。よろしくね」
「うん!よろしくね、ルー君」
ニコニコと差し出された手を握る。──ルーシュも優しそうな笑顔を浮かべているが・・・・・それが表面上だけに見えるのは気の所為だろうか。
第一王子よりも第二王子の方が、油断ならない気がする。
──と言うか、よりウェルバートに近い匂いがする。
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