16.出会い

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──唐突に声をかけられた。 「ね、コウちゃん」 手招きに応じて近づくと、ルーシュは耳元へと口を持っていった。そしてベルセルトに聞こえないよう、小声で囁く。 「───僕たちにあんまり馴れ馴れしくしないでね? 媚び売っても無駄だから」 「・・・・・ぇ」 僅かに声を低くして囁かれたソレに、背中が粟立つのを感じた。絶対に10歳そこらの子供が出せるものでは無い。 改めて確信する──ウェルバートの子なのだと。 じゃあね、とルーシュがベルセルトの背を無理矢理押す形で、立ち去った後も私は呆然と立っていた。 ・・・・・人は見かけで判断しちゃいけないな。 それに───こんな子供(ガキ)に、言われっぱなしの私ではない。 小さくなる背中に向けて、口に手を添えた私は精一杯の大きな声で言い返す。 「──媚びるってなぁに? まだ子供(・・)だから難しい言葉はわかんないや」 〝子供〟という言葉を強調して放った言葉。 振り向いた2つの驚愕した顔に、思いっきり満面の笑顔を見せた。 それに、と言葉を続ける。 「私・・・・・ビッチ(・・・)、じゃないよ?」 初めてルーシュに反応があった。ビクッと肩が跳ねる。わかってんじゃん、と吐き捨てるように言って笑みを消した。 何か言い返そうとしているが、何も言葉が浮かんでこない御様子。 そんなルーシュの悔しそうな様子に、私はにやけるのが止まらない。 ───まだまだ子供だなぁ・・・・・ああ、スッキリした。 「またね(・・・)!! ルー君、ベル君」 ああ、とベルセルトは手を振り返してくれたが、対するルーシュは無反応。 それでもルーシュと目を合わせ、バイバイと手を振る。すると、ふいっと顔をそらされてしまった。 段々と小さくなる背中。それを満足して私は見送る。 ───媚びる気は全くない・・・・・が、仲良くする事でのデメリットは一つもない。 それに、私には〝無邪気〟という武器があるのだから怖いものは無い。 ・・・・・しかも、相手はまだ子供だ。 兎にも角にも、ルーシュが〝天使の皮を被った悪魔〟だと分かっただけでも収穫か。
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