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「大丈夫っすか? 転移魔法でルーシュも来たみたいっすけど・・・・・」
散らばった本を集めていると、入り口にいたクライシュが本棚の裏から顔を覗かせた。
私は、大丈夫、と手を振る。
「ベル君がね、本を探してくれたんだ」
意外そうに目を見張るクライシュ。私の指の先、床にある本を見て顔を綻ばせた。
ボロボロになったその表紙を撫でる。
「へえ? ──珍しいっすね、ベルセルトが異性に優しくするなんて」
「・・・・・珍しいの? 純粋なだけじゃないの?」
「まー、まず言葉がキツいじゃないっすか。しかも慣れてないもんだから、ついつい乱暴になるんすよ」
不慣れ故に不器用なのか。
短い間だったが、先程までのベルセルトの様子を思い出し、1人で納得する。確かに見た目とは違い、口調は荒々しかった。
──見た目美人、中身は悪魔
これがギャップというものか・・・・・いやーギャップって怖い。
あはは、と乾いた笑いを貼り付けながら、私は手近な本を拾う。『種族についての個人的な見解』──まあ、まずはこの本からだな。
本を開き読書モードへと移行した私に、クライシュは立ち上がった。
そして座る私を見下ろす。
「じゃ、用が済んだら昼食を食べに兵舎に行くっすよ~!!多分、そこに2人もいる筈っすから!!」
「はいっ!?」
───よりによって、あんな事があった次の日に行くのか!?
そしてまたあの2人に会えと!?
あんぐりと驚いたまま座り込む私を置いて、笑顔のクライシュは再び扉の方へと向かう。
・・・・・どうしよう。全く良い予感がしないのだが。
不安と共に深く吐いた息。その予感はきっと当たることだろう。
主に心配なのは弟君の方だ。──クライシュは言っていた、転移魔法でルーシュが来たのだと。
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