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───兄の意外な一面を見た。
異性に対しては乱暴に接するあの兄が、その異性のために本を探していたのだ。
「──珍しいね、どうしたの?」
「・・・・・別に。どうでもいいだろ」
不貞腐れたように言う兄。確かにどうでもいいことだが、相手が相手だけに気にはなる。
──数十年もの間、模擬闘技場を護っていた結界が破られた。それも、1人の幼女によって。
もしかしたら、結界はもう限界だったのかもしれない──が、流石に幼女が破ったとは信じ難かった。
なんせ、あの闇鎧龍ですら破れなかった結界──それと同じものを張ったのだから。
今や伝説となった〝銀朱の守人〟に。
しかし、騎士団員たちは口を揃えて言う。
〝コウという子供の仕業だ〟
誰かが嘘を言っている訳では無い。辻褄は合っているし、口裏を合わせた様子もない。
───・・・・・本当にあの子が。
兄が顔を赤くするのもわかる。それに、いつも媚びてくる女共とは違うことも。
だが、何処か違和感があった。まるで作られた幼さと言うような・・・・・。
「・・・・・あいつ、父様に雇われたんだってな」
ポツリ、兄が呟く。その声音からは、尊敬の念がひしひしと伝わってくる。
──〝雇われた〟それは即ち〝認められた〟ということ。
「・・・・・、みたいだね」──なんて事無い、とでも言うように返しながらも、羨ましいと心の底で嫉妬する。
まだ、僕らは認められていないというのに。
「初めてかもね、外から来て認められた人って」
「・・・・・だな」
今までにも何度かあった。何かしらの特技を持って、外から売り込みに来る事が。
しかし実際に雇われたことは無く、殆どは門前払い、中に入れても披露はさせて貰えず放り出される・・・・・そんな仕打ちだった。
だから、あの父様に声をかけて貰える・・・・・雇われる人が現れるとは思っていなかったのだ。
ましてや、自分よりも幼い少女・・・・・なんて。
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