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───・・・・・少し、気になるなぁ。
何故、雇われたのか。何の力をもっているのか、それはどれ程のものなのか。身につけた過程は? それとも生まれつき?
そんなのばかりが頭の中でぐるぐる巡る。
「──ルーシュ?」
「あ、ああ・・・・・ごめんね。少し考え事をしてた」
兄の声で気がつけば、もう既に兵舎の前だった。
・・・・・そもそも、自分は兄を迎えに行っていただけなのだ。いつものように。
兄の定位置である図書室へと──稽古の時間だと伝えに・・・・・来ただけだったのに。
まさか、あんな出会いがあるなんて。
───・・・・・言いかえされちゃったなぁ・・・・・
最後の少女の言葉を思い出し、思わず小さく笑う。それと同時に、油断出来ないと警報が鳴った。
──他の女とは違う。
───・・・・・もし、この平和をかき乱すような奴ならば、容赦はしない。例えそれが、父様の〝お気に入り〟でも──
自分でも珍しいとは思う──ここまで警戒しているのは。それは父様が直接雇ったという事が、前例がない事だからかもしれない。
そうでなければ、気にも止めない。気になるなんてことは絶対にない。
そう、絶対に。
まだ頬が赤い兄を見て、少しだけ意地悪な気持ちになる。扉を開け、すれ違いざまに囁いた。
「もしかして・・・・・兄さん、頼られたのが嬉しかったんじゃないの?」
「・・・・・ばっ、か───言うな・・・・・!!」
図星だね、と笑うと兄は直ぐに目を逸らす。──照れ隠しの癖は変わらないな。
キィ、と扉が音を立てた。昔からの見知った顔が出迎える。
「おせーよ、馬鹿ども2人」
騎士団長の低い声。腕組みをして壁にもたれかかるフィウストを見て、兄が駆け寄った。
その後ろを続く僕。
「今日こそ、勝ってやるからな!!」
「おーおー、威勢がいいガキだな。ま、一億年はえーけどな」
そう言って兄の頭を撫でるフィウスト。・・・・・それはいつも通りの光景だ。
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