16.出会い

21/21
前へ
/387ページ
次へ
「おっ、やっと来たんですね!! 今日もよろしくお願いします」 「全く、待ちくたびれましたよー王子~」 声につられて騎士団員もわらわらと集まり、あっという間に賑やかな空間へ。 その輪に加わった兄は学園にいる時とは違い、心底楽しそうに笑っている。 その景色に口元が緩んだ。 僕も心の底から笑えるこの空間──好きな場所は守らなければ。 「・・・・・警戒、しなくちゃね」 誰にも聞こえないようにそう呟く。──この平穏を守る為にも、もっと強く。 「──そろそろ、稽古を始めましょう」と、その輪に加わって言う。 「フィウストさんって、やっぱ老けてますね」 「・・・・・、俺はまだ20代だ」 男には手厳しいなおい、と苦々しくフィウストが言うのをニコニコと聞いた。 向こうも冗談だと分かっているようで、パシと頭を小突いてくる。 何故か分からないけど、その様子にまた笑った。目元に浮かんだ涙を拭いながら、 「フィウストさんってムッツリだから、女の子の入浴中に聞き耳を立ててそうですね」 「──い、いや。あれはあくまでも監視であって、決してそんな邪な思いは・・・・・」 「・・・・・、え?」 「・・・・・あ」 軽い冗談で言った言葉は、時に空気にヒビを入れる──・・・・・ この後、フィウストが騎士団員たちに問い詰められたのは言うまでもない。 ───コウたちが来るまで、後もう少し。
/387ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5933人が本棚に入れています
本棚に追加