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「おっ、やっと来たんですね!! 今日もよろしくお願いします」
「全く、待ちくたびれましたよー王子~」
声につられて騎士団員もわらわらと集まり、あっという間に賑やかな空間へ。
その輪に加わった兄は学園にいる時とは違い、心底楽しそうに笑っている。
その景色に口元が緩んだ。
僕も心の底から笑えるこの空間──好きな場所は守らなければ。
「・・・・・警戒、しなくちゃね」
誰にも聞こえないようにそう呟く。──この平穏を守る為にも、もっと強く。
「──そろそろ、稽古を始めましょう」と、その輪に加わって言う。
「フィウストさんって、やっぱ老けてますね」
「・・・・・、俺はまだ20代だ」
男には手厳しいなおい、と苦々しくフィウストが言うのをニコニコと聞いた。
向こうも冗談だと分かっているようで、パシと頭を小突いてくる。
何故か分からないけど、その様子にまた笑った。目元に浮かんだ涙を拭いながら、
「フィウストさんってムッツリだから、女の子の入浴中に聞き耳を立ててそうですね」
「──い、いや。あれはあくまでも監視であって、決してそんな邪な思いは・・・・・」
「・・・・・、え?」
「・・・・・あ」
軽い冗談で言った言葉は、時に空気にヒビを入れる──・・・・・
この後、フィウストが騎士団員たちに問い詰められたのは言うまでもない。
───コウたちが来るまで、後もう少し。
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