17.溝

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「・・・・・んー、無かったなぁ・・・・・」 膝に置いた本を、呟きと共にパタンと閉じる。見つからなかった、というだけで更に疲労感が増した。 ベルセルトが持ってきてくれた本を全て読み終えたが、書いてあるのは全てタダの(・・・)魔族の事──角に模様なんかない。 ──何処にも〝私〟の事など、書いていなかった。 心を占めるのは単なる虚無感。・・・・・私は一体()なのか。 「ここにはないのかもねぇ・・・・・」 ここに無いとしたら、もう思いつく当てはない。もう一度探してみるか、と重い腰を上げた。 まずはこの本を片付けないと。 腕の中の大量の本を見下ろし、やれやれと息を吐く。ベルセルトが探してくれたのは嬉しかったが、結局無駄になってしまった。 あんな苦労してまで持ってきてもらったのを思うと、少し申し訳ない。 「──あ、あそこかな」 ぶらぶらと見回していたら、天井近くの本の列に複数の空きを発見。恐らく、あそこをごっそり抜き取ったものだと思うが──・・・・・ ───・・・・・兄の方も凄い奴なんだな、やっぱり。 弟君と同じく、魔力操作のアレで取ったものだろう。ウェルバートの血を引いているだけの事はある。 ・・・・・まあ、そんな天才ではない(・・・・・・・・・)私の場合、《固定》して作った階段を地道に(・・・)登っていく事になるけども。 ピタと立ち止まり、宙に漂う魔素に向けてたった一言。 「──《固定》」 その言葉だけで、脳内のイメージ通りに固定される魔素。 そしてその階段をトントンと上がる。──もう魔素操作(コレ)にも慣れたものだ。 ・・・・・が、やはり自由度は劣る。ベルセルトやルーシュが使った魔力(・・)操作は出来ない。 ──空中で物を支えられても、地から浮かすことは出来ないのである。 ・・・・・体内の魔素とは違って、本当に不便だ。
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