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よいしょ、と全ての本を仕舞い込み、魔素を解いて床に軽々と着地する。ありがたい事に、魔族スペックは今日も健在です。
あれだけ大量の本を持っても、重さを感じなかったし・・・・・。
恐らく、騎士団員を含めた周りの面々も薄々感づいているだろう。それでも何も言わないのは、私がウェルバートに雇われたと知っているからか。
ちら、と扉の方を見やると、パチリと壁に寄りかかるクライシュと目が合った。
にこりと微笑みかけられる。
「・・・・・っ」
何かを見透かされたような気がして、慌ててその目を逸らした。
・・・・・少なくとも、クライシュとウェルバートにはバレているのだろうな──空気中の魔素を扱うスキルを持っていると。
───・・・・・使えるものは、例え怪しくても使うのか。
僅かな間しか関わっていないが、ここでもウェルバートの性格が垣間見えたようだった。
・・・・・はてさて、どうやってこれから過ごせばいいのやら。
本を仕舞い終わり、手ぶらになった私がクライシュの元へと近づくと、待ってましたと言わんばかりに手を広げた。
──そして突然に包み込まれる身体。
「もー遅いっすよ~!!」
「・・・・・っは・な・せ!! そんな事したら、クライシュの体が──」
突然過ぎて一瞬停止してしまった。
両手で強引に押しのけると、意外にもあっさりと離れた。ニコニコ笑うその様子を見て、ハッと言いかけた言葉を呑み込む。
闘技場の時もそうだったが、やはり──
「もう、私の側にいてもへーきなの?」
───・・・・・慣れてきている?
「・・・・・、そうっすね。こう見えて順応早いんすよ」
ほら、とクライシュは私の手を握る。ほんのりと暖かな大きな手が、小さな手を包み込んだ。
・・・・・私の小さな手に巡るのは、大量の〝黒い魔素〟
──ソレが〝精霊族〟に悪影響を及ぼしてしまう。
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