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さっき本で見た知識を思い起こす。──普段は人の型をしているが、体内の魔素循環は無い。あるのは圧縮された魔素の塊のみである。
だから、黒い魔素の影響を受けてしまうのだと。そう予想されるのだが・・・・・。
───・・・・・身体が慣れた? まさか、そんな事は。
エンシャのあの様子を見ていたからこそ、順応する事が難しいと分かる。・・・・・ただ、今回は体内に侵食されてはいないが・・・・・。
何だろう、この違和感は。
・・・・・クライシュの体内には、黒い魔素が見えない筈なのに───何故、感じるんだ?
出会った時は殆ど感じ取れなかったものが、何故今になって・・・・・。
新たに浮上してきた疑問は、元気な声によってかき消された。自然と顔が上がる。
「──さあさ、やっとお昼ご飯の時間っすよ!!」
屈託のない笑顔を見ていると、こちらまで笑顔が溢れてしまう。元気だなぁ、とその手をギュっと握り返した。
「元気なら良かった! 雇い主の守護者だもん、私のせいで具合を悪くさせたら大変だしね──ね、精霊さん?」
「っえ!?」
ね、と可愛らしく同意を求めると、知ってたんすか!?、と予想以上に驚かれた。
・・・・・そんなに驚く事か?
「いやまあ、さっき調べたし・・・・・」
言い訳をするように呟くと、思い当たる節があるらしく、「そう言えば」とクライシュが何かを思い出した。
「──ベルセルトが探してきた本って、『種族』に関する本ばかりだったっすね」
様子を見にやってきたあの時に見られていたか。
・・・・・偶然にも、本来の目的のカモフラージュになったようだ。
「・・・・・、クライシュの事が知りたくてね。知れて良かったよ───精霊だって」
その言葉を放った途端、クライシュの目が見開かれた。驚いた、とあからさまに言っているような顔を、こちらに向けている。
「もーなんでバレたんすかねぇ? この姿は完璧な筈なんすけど・・・・・」
口を尖らせて顎に手を当てるクライシュ。
バレた原因が分からないのも無理はない。・・・・・魔素を可視しない限り、クライシュの言う通りで正体はバレないだろう。
──簡単には〝魔素が見える〟という事実には繋がらない。
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