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中庭に出ると、一際大きな風が吹き上げる。眩しいくらいの日光が、色を鮮やかに際立たせていた。
──キラキラと輝く非現実的な景色は、2度目だというのにこんなにも。
地球とは違うこの世界は美しい。
───・・・・・本当に、ここは。
目を細めて眺める私だったが、それはクライシュの呆れるような声で遮られた。
「・・・・・、何やってんすか」
ピクリと肩が跳ねる。ゆっくりと横を向くと、クライシュの怪訝そうな顔があった。
やっちまった、という言葉が顔に出る。・・・・・絶対何か思われている。
──うっとりと中庭を眺めながら、故郷に想いを馳せていたなんて・・・・・絶対に言えやしない。
迷った挙句、恐る恐る小さく口に出す。
「・・・・・センチメンタルに浸ってたんだよ」
「へーえ・・・・・」
───・・・・・言いたい事はわかる。わかるから、そんな目で見ないでくれ・・・・・
じーっと何か言いたげな目で、無遠慮に見てくるクライシュ。言いかけているその様子に、片手でストップと前に出した。
額に手をつき、引きつった笑顔で息を吐く。
「・・・・・わかるよ、言いたい事は十二分にわかる。どうせあれでしょ、5歳児らしくないって思ってるでしょ」
そう言うと、おお、という驚きの声と共にパチパチと拍手の音。
「良くわかったっすね!!」
「・・・・・、思ってたんかい」
───・・・・・もう何も言うまい・・・・・
膨らませた頬に赤みが差すのを感じながら、気恥ずかしくなった私は、ぐいぐいと自らクライシュの大きな手を引く。
こっちだったか、と記憶を頼りに進むと、左手側にガラス張りの建物が見えた。
ドーム状をしており、結構大きい。中には見た事のないような植物で埋め尽くされていた。
外から中が見えないソレに、つい足が止まる。
──代わりに見えたのは、建物に収まりきらない程の巨大な白い魔素の塊だった。
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