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その大きさは、ベルセルトやルーシュのソレよりも遥かに超える───あのSランク冒険者であるアルマダに匹敵するほどだ。
──個人の魔力量は、成長と共に少しずつではあるが増加していく。
そう考えると、もしこれが子供であったら・・・・・。
──ふと、この正体が気になった。
私はじっとその建物を見つめ、
「───ねえ、クライシュ」
と、後ろにいるクライシュに呼びかける。何すか、と返した彼に、建物に向けて指を指した。
「この建物は、なぁに?」
「え、あー植物園っすね・・・・・あんま、中は見えないっすけど」
だろうな、とは思っていた・・・・・が。
蔦が天まで覆い隠し、鮮やかな緑が視界を遮る。クライシュの言う通り、中はよく見えない。
出入口すら何処かわからない程だ。・・・・・この中に本当に人がいるのかも定かではない。
「・・・・・この中ってさ、誰かいるの?」
「この中っすか?」
んー、とドームを見上げながら、クライシュが考える。暫くして、思い出したようにハッとした。
しかし、その顔は曇っている。
とても言いたくなさそうに、
「・・・・・、心当たりがない訳では無いんすけど・・・・・」
と振り返るクライシュ。眉尻を下げる彼だが、遠慮なく私は聞いた。にっこりスマイルで、その顔を覗き込む。
「だーれ?」
「・・・・・ただの野良猫っすよ、野良猫」
「猫?」
思い浮かぶのは、地球でよく見かけるあのネコだ。
人間じゃないの、と聞くと、人間っすよ、と返事が来る。
・・・・・いや、結局どっちだよ。
じとー、とクライシュの手を引き、目線で訴えかける──早く言え、と。
そんな純真な思いが通じたのか、嫌そうな顔ではあるが渋々と、クライシュが口を開いた。
「──フィーさんの弟っす、多分」
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