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「・・・・・、何となく察しは付くんすけど・・・・・なんで隠れているんすかね」
「え、だって気まずいじゃん。やだよ、怖いよ」
──表面上は真顔ではあるが、怖いというのはあながち間違いではない。
そう言いながら、クライシュの服の裾をきゅっと握りしめる。クライシュが「ちょっ、皺に・・・・・」とか慌てていたが、あまり気にしない。
早く早くと促すように背を押した。大人でしょ、と付け足すと、ボソリとクライシュが咎めるように言う。
「・・・・・子供っていいっすね」
「クライシュには、もう戻ってこないよ」
「いやいや、寧ろ戻ってきた方が怖いっすよ!? 」
中に入り食堂へと向かうと、大勢の騎士団員たちが食事を取っていた。よくよく見てみると、フィウストの周りには王子2人組がいる。
まだ、こちらには気づいていないようだ。
何となく一安心した時、すぐ傍から嬉々とした声がした。
「あっ、クライシュさんと───き、昨日の・・・・・」
隠れていた私の存在に気づくと、嬉々とした表情から一変、目に見えて怯えた表情をする。
・・・・・予想はしていたが、実際目の当たりにしてみると中々キツいものがあるな。
私は笑顔を貼り付け、顔を上げた。気にしていない風を装って、正面に立つ。
「先日は闘技場を壊してしまい、大変申し訳ない所存でございます」
そう言って深く頭を下げれば、ポカーンと呆気に取られた顔が2つ。周りで談笑していた騎士団員たちも、ギョッとする。
あっという間に視線が集中した。
──到底5歳児とは思えぬその物言いは、違和感そのもの。
それに気づかないのは、言った本人ただ1人であった。
──いつの間にか、目立っているという事実に目を丸くする。
「───えっ?」
一体どうしたのか──と状況が読めない。私はただ、謝罪をしただけなのに。
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