17.溝

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どうしていいか分からずにオロオロする私に、クライシュが助け舟を出す。 「えーっと・・・・・ちゃんと練習通りに言えたっすね!!」 そう言うと、クライシュは乱暴に頭を撫でる。グシャグシャと頭を揺さぶられながら、「う、うん・・・・・」と私は微妙な笑顔を浮かべた。 ───・・・・・子供に、こんな謝罪の仕方を教えるのか普通は。 もっと良いフォローはなかったのか。・・・・・そう思わずにはいられない。 しかし幸いなことに、相手は単純な性格だったようで、簡単にそれを信じた。 ああ!と、察した風にポンと手を打つ。 「練習したんですね!! 偉いなぁ」 「えへへー」 顔の引き攣りが止まらない。自分でも、笑いながらも頬がピクピクしているのが分かる。 どうやら都合の良いことに、クライシュの思惑通り『この謝罪は前日に練習したものですよ』と、勘違いしてくれたようだ。 段々と視線が離れていくのを感じながら、招かれるままにクライシュの隣の席へと座る。 ふぅ、と一息ついた時、不意に「おい」と声をかけられた。 顔を見ると、先日ぶりの顔が──3つ。 「ウェルから聞いたぞ、闘技場を壊しやがった(・・・・・・)んだってな。一体何をしでかしたんだ?」 やけにそこだけを強調してフィウストは言う。その背後に漂う黒いオーラを、見て見ぬ振りをして私は無邪気に笑った。 「別にわざとじゃないもん。それに、変なことは何もしてないし」 「いーや、絶対何かやったね。そうじゃなきゃ、あんな簡単に結界が破れる筈がない」 ふと、閃いた。ビシッと人差し指を立てる。 「・・・・・、あ!! もしかして老朽化?」 そんな私の閃きを、やれやれとでも言うようにフィウストはため息をついた。 憐れむような目で、見下ろされる。 「・・・・・、結界に老朽はないっていう常識(・・)は知ってるか?」 ・・・・・全く、いちいち嫌味ったらしい奴だ。
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