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私がジト目でフィウストを見返していると、後ろで隠れていたベルセルトが、ひょっこりと顔を覗かせた。
モジモジと、顔を赤らめて様子を伺っている。
「・・・・・よ、よう」
「さっきぶりだね、ベル君!」
営業スマイルで対応しながら私は思う──なんて純粋な子なんだろう、と。
まるで恋する乙女のような反応に、心が洗われていくようだ。
──・・・・・色々な意味で、フィウストとは大違いである。
そう思った途端、不機嫌に挟まれる言葉。
「・・・・・、何か失礼な事を思ってないか」
「んーん、全然」
───何故バレたし。
いやに鋭いやつだな、と苦々しい表情で小声で呟く。──なんだ、第六感でもあるのかこの男は。
「やっぱ、思ってたんじゃねーか」という声に、新たに地獄耳の疑いが浮上したその時。
ふと、ローブを軽く引っ張られる感触。向くと、赤くなっているベルセルトが、何か言いたそうにしている。
「あ、あのさ・・・・・」
「うん?」
目をそらしながら吃るベルセルト。
必死に何かを言おうとしているのは分かるが、如何せん言葉が出ず、その意思は読み取れない。
───・・・・・何か言われることをしたか?
何もわからずに小首を傾げていると、ベルセルトの横にいたルーシュが渋々と代わりに言った。
その自然な動作からは〝慣れ〟のようなものを感じる。
「コウちゃん、兄さんが選んだ本は役に立った?」
どうやら、ベルセルトはさっきの本の事が聞きたかったらしい。
・・・・・それを聞くまでに、どれ位の時間がかかっている事やら。
「うん!! ありがとう、ベル君」
「良かった」と答えるルーシュの横では、期待通りの答えが聞けた安心感から、ほっと息をつくベルセルトが。
横目でそれを見たルーシュが、ニコニコと一言付け足す。
・・・・・意地悪そうな笑みだ。私はそれによく似た笑顔を知っている。
──それは言わずもがな・・・・・ウェルバートしかいない。
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