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「兄さん、ずーっとその事を気にしてたんだよ」
「ル、ルーシュ!! ・・・・・、そんな訳ないだろ!? 」
目に見えて焦るベルセルトが、必死にルーシュの言葉を否定するが説得力がない。
そんなベルセルトの様子に、周辺に生暖かい空気が流れた。
くすくす、と私も釣られて笑う。
「そうなんだ、本当にありがとーね」
「・・・・・っ、別に。気になんかしてないからな!!」
精一杯の営業スマイル。もちろん、感謝の気持ちは込めている。
それを見たベルセルトは、更に顔を真っ赤に染めた。見かねたルーシュが、やれやれと兄をフィウストの後ろに隠す。
「もー・・・・・兄さん、弱すぎ」
「・・・・・、学園の女より過剰じゃねーか?」
「・・・・・レベルが違うの、レベルが」
戸惑いながらも後ろに隠したフィウストに、忌々しげに答えるルーシュ。
・・・・・どうしてだろう、褒められている筈なのに良い気がしない。
とりあえず一段落つき、皆で配給制の昼食を取りに行く。ルーシュに続いて後ろに並んだ時、微かな囁き声が聞こえた。
「ほら、アイツだよアイツ」
「え!? あんなチンチクリンが、ウェルバート様のお気に入りかよ・・・・・」
「──でも結界破いたんだって」
「はあ? 冗談だろ」
「いやいやこの目で見たって!! 何かわかんないけど、火の海になったんだってば」
「んなわけ・・・・・てか、それが本当なら、タダの化け物じゃねーか」
「それな、人間じゃねーよな・・・・・」
───・・・・・。
思わず力が入った手が、おぼんに乗った茶碗をカチャリと鳴らす。
・・・・・こんな程度で心を痛める訳はないが、妙にその会話は心に残った。さっきまでは気にならなかった視線も、敏感に感じ取ってしまう。
「コウちゃん、どうしたの?」
「え、いや・・・・・ううん、何でもない」
意外にもルーシュが、顔を曇らせた私の心配をしてくれた。どうやら、向こうとしても敵対したい訳では無いらしい。
それもそうか、と納得。何よりも、相手にメリットがない。
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