17.溝

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「兄さん、ずーっとその事を気にしてたんだよ」 「ル、ルーシュ!! ・・・・・、そんな訳ないだろ!? 」 目に見えて焦るベルセルトが、必死にルーシュの言葉を否定するが説得力がない。 そんなベルセルトの様子に、周辺に生暖かい空気が流れた。 くすくす、と私も釣られて笑う。 「そうなんだ、本当にありがとーね」 「・・・・・っ、別に。気になんかしてないからな!!」 精一杯の営業スマイル。もちろん、感謝の気持ちは込めている。 それを見たベルセルトは、更に顔を真っ赤に染めた。見かねたルーシュが、やれやれと兄をフィウストの後ろに隠す。 「もー・・・・・兄さん、弱すぎ」 「・・・・・、学園の女より過剰じゃねーか?」 「・・・・・レベルが違うの、レベルが」 戸惑いながらも後ろに隠したフィウストに、忌々しげに答えるルーシュ。 ・・・・・どうしてだろう、褒められている筈なのに良い気がしない。 とりあえず一段落つき、皆で配給制の昼食を取りに行く。ルーシュに続いて後ろに並んだ時、微かな囁き声が聞こえた。 「ほら、アイツだよアイツ」 「え!? あんなチンチクリンが、ウェルバート様のお気に入りかよ・・・・・」 「──でも結界破いたんだって」 「はあ? 冗談だろ」 「いやいやこの目で見たって!! 何かわかんないけど、火の海になったんだってば」 「んなわけ・・・・・てか、それが本当なら、タダの化け物じゃねーか」 「それな、人間じゃねーよな・・・・・」 ───・・・・・。 思わず力が入った手が、おぼんに乗った茶碗をカチャリと鳴らす。 ・・・・・こんな程度で心を痛める訳はないが、妙にその会話は心に残った。さっきまでは気にならなかった視線も、敏感に感じ取ってしまう。 「コウちゃん、どうしたの?」 「え、いや・・・・・ううん、何でもない」 意外にもルーシュが、顔を曇らせた私の心配をしてくれた。どうやら、向こうとしても敵対したい訳では無いらしい。 それもそうか、と納得。何よりも、相手(ルーシュ)にメリットがない。
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