5933人が本棚に入れています
本棚に追加
「・・・・・この国の料理って、どこもこんなに豪華なの?」
そう言って、私は視線を落とす。
丸いパンに数種類の野菜が沢山入ったポトフ、そして果物はリンゴ。
精鋭を集めた王宮騎士団とはいえ、大勢の料理にしてはかなり豪華に見えた。
それに調味料の事もそうだが、思っていたよりは食が発達している。
中世時代・・・・・つまり、異世界では砂糖や塩が高級品で料理が不味い───という先入観があったのだが。
悪く言えばただの捨て駒である兵士にも、ここまで良い食事を振る舞えるのなら、国内で格差はあれど、多少は裕福なのかもしれない。
何処もっていう訳じゃないよ、とルーシュが否定した。配膳された料理をおぼんに乗せる。
「───どの国にも、貧富の差はあるでしょ? この国も同じだよ」
おぼんに乗せられた料理。そこに差が生まれるのは、どの国でも同じだと言う。
そうだね──そう言って笑えば、こいつわかってんのかというような顔を向けられた。
失礼な。いくら馬鹿でも、それくらいはわかる。
───歳の差が違うんだよ、君とは。
心の中で悪態をつきながら、4人の後について行き、向かい合って座る。
・・・・成り行き上とはいえ、生憎私の横はルーシュだった。そして向かい側にはフィウスト。
当然日本ではないので、頂きます等の挨拶はなく、何とも言えない空気の中、各々食べ始める。
そうだ、と思い出したように話し出したのはクライシュだった。
「そろそろ、紅い月の日っすね」
───・・・・・紅い月?
その言葉に首を傾げたのは私だけのようで、他は皆知っている風に頷く。
「あれ? 知らないんすか?・・・・・結構、絵本にもなっている有名な厄日なんすけど」
「えっ厄日なの?」
名前からしてあまりいい気はしなかったが、まさか厄日だとは。
知らない私の為に、クライシュは説明をし始めた。人差し指を立て、テーブルに身を乗り上げる。
「いいっすか、紅い月の日というのはっすね───」
最初のコメントを投稿しよう!