17.溝

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「・・・・・この国の料理って、どこもこんなに豪華なの?」 そう言って、私は視線を落とす。 丸いパンに数種類の野菜が沢山入ったポトフ、そして果物はリンゴ。 精鋭を集めた王宮騎士団とはいえ、大勢の料理にしてはかなり豪華に見えた。 それに調味料の事もそうだが、思っていたよりは食が発達している。 中世時代・・・・・つまり、異世界では砂糖や塩が高級品で料理が不味い───という先入観があったのだが。 悪く言えばただの捨て駒(・・・)である兵士にも、ここまで良い食事を振る舞えるのなら、国内で格差はあれど、多少は裕福なのかもしれない。 何処もっていう訳じゃないよ、とルーシュが否定した。配膳された料理をおぼんに乗せる。 「───どの国にも、貧富の差はあるでしょ? この国も同じだよ」 おぼんに乗せられた料理。そこに差が生まれるのは、どの(せかい)でも同じだと言う。 そうだね──そう言って笑えば、こいつわかってんのかというような顔を向けられた。 失礼な。いくら馬鹿でも、それくらいはわかる。 ───歳の差が違うんだよ、君とは。 心の中で悪態をつきながら、4人の後について行き、向かい合って座る。 ・・・・成り行き上とはいえ、生憎私の横はルーシュだった。そして向かい側にはフィウスト。 当然日本ではないので、頂きます等の挨拶はなく、何とも言えない空気の中、各々食べ始める。 そうだ、と思い出したように話し出したのはクライシュだった。 「そろそろ、紅い月の日っすね」 ───・・・・・紅い月? その言葉に首を傾げたのは私だけのようで、他は皆知っている風に頷く。 「あれ? 知らないんすか?・・・・・結構、絵本にもなっている有名な厄日なんすけど」 「えっ厄日なの?」 名前からしてあまりいい気はしなかったが、まさか厄日だとは。 知らない私の為に、クライシュは説明をし始めた。人差し指を立て、テーブルに身を乗り上げる。 「いいっすか、紅い月の日というのはっすね───」
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