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「ワシも同意見じゃな。アレをそのまま飼うのは、愚の骨頂」
1人がそう言えば、「そうだ」「まさにその通り」と鷹揚に頷く重鎮たち。
しかし、肝心の具体的な案は出てこない。
「折角の良品だ。意のままに操れればいいのだがな」
あれやこれやと、力の使い道が飛び交う。他国への牽制や、戦力の拡大──利用する道は沢山ある。
──見た目は幼女でも、中身は化け物
──それ故に危険
それはこの場にいる全員が、共通して思っていることだった。
「──何か具体的な案をお持ちの方は、いらっしゃいませんか」
中々進まない会議に、黙って見ていた男性が口を開く。
途端にピタリと止む会話──誰も具体案は持っていないのだ。皆が皆、顔を見合わせるばかりで、進展がない。
何のための会議だか、と心中を荒らす男性。
そんな中、1人だけが言葉を発した。
「・・・・・その件、ワシに任せてくれんか」
長く伸びた髭を撫でつけそう言うのは、一番奥に鎮座する老人。どっしりと構えた姿勢からは、歳を感じさせない雰囲気がある。
「──何か策があると?」
怪訝そうに男性が聞く。その声には驚きも含まれていた。
──何故なら、発言者が珍しかったからである。
王宮魔術師、総長──グラーフ=オルディオ。
「ちょっとした昔からの知り合いでな。アレを奴隷化する魔道具を持っている筈じゃ」
これ以上は話したくないのか、それだけを言うと老人は口を噤む。
「・・・・・そうですか」
それを聞いて考え込む男性。このまま会議が進まないよりも、確実な策の方がいいのかもしれない。
いいでしょう、と許可を出す。「この件は任せましょう」
皆様もそれで宜しいですね、と確認すると、彼方此方から承認の拍手がぱらぱらと聞こえた。
──まるで、助かったとでも言うように。
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